強豪国のサッカースタイル・第3弾 スペイン編 | 真面目に遊んで生きてくレシピ

強豪国のサッカースタイル・第3弾 スペイン編

スペインの闘牛場

現在サッカーは、IFABが定める競技規則によって、全世界共通のルールのもとにプレーされています。

しかし、共通のルールがありながらも、世界各国には様々なサッカースタイルがあります。

例えば、グループの規律を重視するヨーロッパ、それとは逆に、個人技を重視する南米。

いったいなぜこういった違いが生まれるんでしょうか。

そこには、体格や人種、生活スタイルなどの国民性から、政治、経済、音楽、言語などの文化までもが複雑に絡み合い、サッカー誕生から150年以上という長い歳月をかけて築き上げられてきた歴史があったのです。

そこで、「強豪国のサッカースタイル」と題したこの特集では、サッカーバカ歴20年の僕がその答えを求めるため、ワールドカップの強豪国、さらには強豪クラブチームがひしめいているヨーロッパと南米に絞って、各国のサッカーの由来に迫り、スタイルや戦術の違いを詳しくまとめてみました。

第3弾となる今回は、日本では無敵艦隊の愛称でおなじみ、スペインをご紹介したいと思います。

↓第2弾・カルチョの名でおなじみのイタリア編はこちら。

イタリアのサッカースタイルをまとめています。この記事を読むことで、ワールドカップ優勝4回の強豪国であるイタリア代表と、カルチョの名で親しまれるイタリア・セリエAのサッカースタイルや戦術の特徴がわかります。
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エル・クラシコが世界で最も熱いダービーなのはなぜか

スペインサッカーと言えばまず思いつくのはやはり「エル・クラシコ」です。

直訳すると「伝統の一戦」。

スペインの首都、マドリードを本拠地とする「レアル・マドリード」と、国内ではマドリードに次ぐ第2の都市、バルセロナを本拠地とする「FCバルセロナ」の対戦のことを指し、世界で最も有名なダービーマッチと言えるでしょう。

「スペインサッカーを知るにはクラシコを知れ。」という言葉があるとかないとか。

少しご紹介させてください。

フランシスコ・フランコによる独裁政権

元来、地元への忠誠心が強く、同じ国内でも独立精神の高いスペイン国内では、地域によって言語や文化に大きな違いがありました。

例えば、バスク地方ならバスク語、カタルーニャ地方ならカタルーニャ語といった具合です。

1935年~1975年の40年もの間、FCバルセロナのあるカタルーニャ地方では、フランシスコ・フランコによる独裁政権によって、いわゆる地元語のカタルーニャ語を使ってはいけないという弾圧を受けていました。
独裁者であるフランコ政権の拠点は首都マドリードのため、公用語となるカスティーリャ語を使わなければならないという政策です。

そんな状況下で、唯一カタルーニャ語を使うことが許された場所は、FCバルセロナの本拠地である「エスタディオ・カンプノウ」だったのです。

つまり、弾圧を受けていたカタルーニャの人々にとってカンプノウは特別な場所であり、その上首都マドリードでフランコ政権から支援を受け、チーム力を着々と上げていたレアル・マドリードへの敵対心は、そういった歴史が生み出したものだったのです。

独裁政権が生み出した余波

独裁政権の終焉からしばらく時が経ちましたが、その歴史は消えることはありません。

レアル・マドリードとFCバルセロナの間で行われる移籍は「禁断の移籍」と呼ばれ、スペインサッカー界では暗黙のタブーとなっていました。

しかし1990年代後半、FCバルセロナの中心選手として活躍していたルイス・フィーゴというポルトガルの名選手は、99-00シーズン終了後の2000年7月、後に「銀河系軍団」と呼ばれるレアル・マドリードへ移籍するという「電撃移籍」をやってのけます。

フィーゴはバルセロナサポーターから裏切り者扱いをされ、移籍後は、カンプノウでプレーするたびに「死ね、フィーゴ」の大合唱とともに罵声を浴びせられることに。

特にフリーキッカーの名手だった彼がコーナーキックを蹴ろうものなら、コイン、ペットボトル、ガラスビン、そして有名なのは「豚の頭」など、プレーをする間絶え間なく様々な物を投げつけられ、そのあまりのひどさに主審は試合を中断せざるを得ませんでした。

サッカーの試合では、基本的には雨が降ろうが雪が降ろうが、試合が中断するということは滅多にありませんが、コーナーキックやスローインのたびに物が投げられ過ぎて中断が起こるんです。
ドリブラーであるフィーゴはサイドが主戦場なので、白いユニフォームを着た彼がカンプノウでプレーするたび、終始タッチライン際がゴミだらけになりました。

豚の頭が投げつけられた試合を生中継で観戦していた僕は、ど深夜に繰り広げられたそのディープな試合を目の当たりにし、Jリーグとは似ても似つかない光景にとてつもない衝撃を受けたのを覚えています。

ちなみに、この試合の中継は倉敷さんと金子さんのコンビで、「なぜ豚の頭が飛んできたのか?」と軽い議論になり、最終的には「試合に勝ったら豚の頭を焼いてパーティーをしようと計画していたバルセロナサポーターが、フィーゴに対する憎しみのあまり思わず投げてしまったのではないか」という推測でまとまりました。

少し話しが逸れましたが…。

実は、禁断の移籍というのはフィーゴ以外にもあるんですが、ここまで大きな問題に発展した原因は、

  • 2000年にヨーロッパ年間最優秀選手賞であるバロンドールを受賞、翌2001年にFIFA最優秀選手賞を受賞するほどの質の高い選手だったこと
  • FCバルセロナでキャプテンを任されるほど、サポーターから信頼されていたこと

という要因が重なって、現在でも語り継がれるほどの代表的な「禁断の移籍」となったわけです。

それにしても、あれだけの怒号や物が飛び交う超緊迫状態で冷静にプレーできるフィーゴのメンタリティの強さには、ただただ感嘆しましたね…。

フランシスコ・フランコという独裁者による弾圧。

カンプノウという特別な空間。

エル・クラシコ」という舞台にはスペインの歴史が刻まれているのです。

豚の頭が飛んできたあのクラシコは、僕がサッカーの魅力にどっぷりと引き込まれていくことになった思い出深い試合のひとつとして、今でも鮮明に脳裏に焼き付いています。

リーガ・エスパニョーラの印象

スペインのプロサッカーリーグはリーガ・エスパニョーラと呼ばれ、レアル・マドリード、FCバルセロナの2強のイメージが強いですが、それ以外にもアトレティコ・マドリードやセビージャなど、ヨーロッパの舞台で常連の強豪チームが多数所属しています。

特に近年はUEFAチャンピオンズリーグ、UEFAヨーロッパリーグのベスト4には必ずスペイン勢の姿があるほどですが、そんなリーガ・エスパニョーラの試合を見ていて感じることは…

  • ポゼッションサッカーやテクニカルなドリブル突破など、攻撃的なスタイルのチームが多い
  • サポーターは常にスペクタクルな展開を求めていて、試合が停滞したりロングボールが多かったりするとブーイングが起きる
  • ヨーロッパでも屈指の地域密着型であり、クラブチームは熱狂的なサポーターに愛されるシンボルである

といった具合に、他国に比べかなり独特の文化が定着しているスペインサッカー。

その癖の強さを順番にあげてみます。

勝つだけじゃ納得してくれない

「情熱の国」と言われるように、スペインのサポーターはとにかくお互いに攻め合う試合展開を好む傾向があり、どんなに良い結果が出ようが、守備的な戦術のサッカーや単調なサッカーをする監督は批判を浴びることになってしまいます。
過去にはリーグ優勝を果たしたのにも関わらず「試合内容がつまらない」という理由で解任された監督もいます。

そんなスペインサッカーの攻撃的なスタイルを証明するものが、リーグ得点王のゴール数に表れています。

2010-11シーズン以降、7シーズン中5シーズンで40得点以上の得点王が生まれています。

照明が消えてしまった後日の試合がスペクタクル過ぎる

上述の通り、カンプノウでは物が投げ込まれ過ぎて中断しましたが、他に印象に残っている出来事と言えば、スタジアムの照明が試合の途中で消えてしまったことですね。

その試合は、前半は何事もなく終了したんですが、後半開始から少し経過したころで突然スタジアムの照明が消え、テレビ中継の画面も真っ暗に。
結局その日は復旧できずに試合は終了、後日、照明が消えてしまった後半の途中からやり直すことに。

後日の試合は、通常90分プレーするところを半分以下の30分~40分(うろ覚えですいません)だけで終わりということで、ペース配分が普段と全く違った超ハイペースの目まぐるしい試合展開になり、文字通り「目が離せなかった」のを覚えています。

世界一激しく世界一優しいダービー&世界一癖の強い運営方針

地域密着型のスペインでは、クラシコ以外にも世界一激しいと言われる「アンダルシアダービー:セビージャ×ベティス」があります。

元々、1つのクラブだった時代に、選手の雇用問題などが原因で2つのチームに分裂し、その価値観・思想の違いが由来となっているダービーです。

そしてもうひとつ、世界一友好的なダービーと言われる「バスクダービー:アスレティック・ビルバオ×ソシエダ」。

同じバスク地方のクラブ同士の対戦で、バスクという地を愛するがゆえに、両チームのサポーターが混ざり合い、互いに肩を組みながら応援するという珍しい光景をみることができます。

ライバルとの絶対に負けられない戦い、あるいは因縁の対決といった意味が強い「ダービー」という言葉ですが、そういった意味では、バスクダービーは「ダービーと呼べるのか?」という気もしますが。

ちなみに、アスレティック・ビルバオは、1912年からスペイン・バスク地方出身選手のみでメンバーが構成されています。

多国籍化するクラブチームが主流の現在ではかなり癖の強い運営方針ですが、リーグの順位は毎年安定して中~上位につけており、ヨーロッパリーグでもたびたび上位に顔を出す実力派。

さらに特筆すべきは、1929年のリーガ・エスパニョーラ創設時からリーガに参戦し続けているビルバオは、その89年の歴史の中で1部から2部に降格したことが1度もありません。
2018年現在、リーガ・エスパニョーラで2部へ降格したことがないのは2強+アスレティック・ビルバオだけとなっています。

2強時代の終焉なるか

クラブチームに支払われる放映権料が2強に偏るシステムだったため、それ以外のチームの赤字問題が深刻化していましたが、16ー17シーズンから大きく方針転換されたことで、他のクラブへの収益が増え、少しずつですが明るい未来が見え始めています。

さらに、ディエゴ・シメオネが監督に就任してからのアトレティコ・マドリードは2強に割って入る勢いを見せ、近年のヨーロッパの国際舞台では、楽しさだけではなく勝負強さも見せる実績ナンバー1のリーガ・エスパニョーラ。

クラブ運営の健全さが伴えば、まさに向かうところ敵なしの無敵艦隊ならぬ「無敵連盟」となるはずです。

代表のサッカースタイル

近年の代表は、2006年あたりから、FCバルセロナのメンバーを中心にした「ティキ・タカ」と呼ばれるポゼッションサッカーで世界を席巻します。

スタメンの半分以上がFCバルセロナの選手で構成され、「メッシのいないバルセロナ」と言われるほど連携のとれた質の高い戦術でサッカーを展開し、国際舞台で旋風を巻き起こすことになるのです。

FCバルセロナの戦術を受け継いだフォーメーション「0トップ」を武器に、猛威を振るい続けたスペイン代表。

あえて固定のセンターフォワードを置かずに、1.5列目や2列目、サイドバックの選手が自由に攻撃参加する新しいスタイルを確立し、ユーロ2008優勝に続いて、2010年南アフリカ大会でワールドカップを初制覇、勢いそのままにユーロ2012も優勝と、史上初の主要国際大会3連覇を達成しました。

無敵艦隊の由来を知っておこう

スペイン代表について、ひとつ覚えておくべきことがあります。

スペイン代表のことを「無敵艦隊」と呼ぶのは、日本のメディアだけなのでご注意ください。
というのも、ヨーロッパの歴史を振り返ると、次のようなことがわかりました。

16世紀に植民地をどんどん広げ、世界でも最強と言われるほど勢いのあったスペイン艦隊。
その最強艦隊が、戦力で明らかに下のクラスだったイングランド艦隊と戦い、惨敗した時に、「皮肉」として言われるようになった、という歴史があります。

「パッと見は強そうなんだけど勝てない」という批判的な呼び方なので、スペイン人に対して気軽に無敵艦隊と言ってしまうのは、軽率なプレーとして警告を受けるかもしれません…。

使う時はよく考えてから発言しましょう!

まとめ

情熱の国、スペイン。

人々はピッチに立つ11人に熱い視線を注ぎ、迫り来るディフェンダーを華麗なテクニックで翻弄するその姿に「オーレ」の掛け声をかけ、まるで猪突猛進してくる闘牛をいなす「マタドール」を彷彿とさせるプレーに酔いしれるのです。

その中核を担っていたシャビ・エルナンデスに代わる人材が表れれば、スペイン代表「ラ・ロハ」は再び僕らに、「スペクタクルなサッカー」を届けてくれるでしょう。

↓次回は、安定の実績を誇るドイツです。

ドイツのサッカースタイルをまとめました。この記事を読むことで、日本人と共通点が多いと言われるドイツ人の国民性、ワールドカップの舞台で安定した好成績を収めるサッカー強豪国ドイツ代表の戦術の特徴がわかります。
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