一般的に使われるショックリーダーの材質というと、「フロロカーボン」と「ナイロン」の2種類。
それぞれに特徴があり、メリット、デメリットという個性を持っているわけですが、今回は「ショアジギング」というカテゴリーに絞った場合にどちらの材質を選ぶのが正解なのかを見極めるため、両者の違いを比べます。
ショアジギングをするときにどちらのラインを使うか迷っている方は参考にしてください。
フロロ、ナイロン、PEの比較表
最初に、PEも加えた3者を比較することによってそれぞれのラインの個性を見比べてみます。
フロロとナイロンの比較表
ナイロン | フロロカーボン | PE | |
---|---|---|---|
比重 | 1.14 | 1.78 | 0.97 |
吸水性 | あり | なし | なし |
伸び | 伸びる | 少し伸びる | 伸びない |
感度 | 低い | 普通 | 高い |
強度 | 普通 | 少し弱い | 強い |
耐摩耗性 | 普通 | 強い | 弱い |
屈折率(水1.33) | 1.53 | 1.42 | – |
価格 | 安い | 少し高い | 高い |
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ご覧のように、フロロとナイロンには細かいところも含めると様々な性質の違いがあるわけですが、今回のテーマとなる「ショアジギングでショックリーダーとして使う場合」に限定して考慮すると、どの項目に注目するべきかが見えてきます。
フロロとナイロンの違いを詳しく見ていきましょう。
吸水性の有無
両者の材質の決定的な違いとしてあげられるのが吸水性の違い。
フロロは吸水性がなく、ナイロンは吸水性がある。
吸水性があるということは水がラインに浸透し、劣化が早くなる。
そのうえショアジギングでは真水ではなく海水で使用するという条件まで付け加えると、この項目では吸水性のないフロロカーボンのほうがショアジギングに適しています。
強度
ショックリーダーとして使う場合にぜひ高いレベルであってほしい強度。
引っ張ったときにどのくらいの力まで耐えられるのかを示す数値の違いを知りたいところですが、「釣り用ラインの強度試験」という非常に参考になる実験レポートが公開されていましたのでここでご紹介します。
実験は、メタルラックに「電子ばねばかり→8の字に結んだ新品のライン→バケツ」を吊るし、バケツに徐々に水を入れていって切れた数値を記録し、それを10回行なうというもの。
結果は以下の通りです。
ナイロン | フロロカーボン | |
---|---|---|
最大 | 1,135g | 947g |
最小 | 921g | 665g |
平均 | 1,040g | 856g |
冒頭でPEを含めた3者を比べた表ではナイロンが普通、フロロが少し弱いとなっていましたが、より具体的な数値の違い(平均)を見ると、「フロロカーボンの強度はナイロンの82%である」ということがわかります。
さらに、伸びについてはナイロンのほうが伸びるという特徴を持っていることから、レポートでは以下のような考察がされています。
実験結果から、新品の状態では、ナイロンラインとフロロカーボンラインでは、ナイ ロンラインの方が、強度がありました。ナイロンラインは適度な伸びがあるため、 フロロカーボンラインに比べ強度があるのではないかと考えました。
フロロはナイロンの約8割の強度を持っていることから「圧倒的な違い」というほどではないものの、この項目ではナイロンのほうがやや優勢。
耐摩耗性
上述の強度同様、ショックリーダーとして使う場合にぜひ高いレベルであってほしい耐摩耗性。
実は、この項目でフロロとナイロンの両者の性質に明確な差が出ます。
先ほどご紹介した「釣り用ラインの強度試験」では、新品の状態のラインだけでなく傷をつけたラインでも実験を行なっています。
その実験結果がこちら。
ナイロン | フロロカーボン | |
---|---|---|
最大 | 780g | 921g |
最小 | 250g | 737g |
平均 | 504g | 798g |
ナイロンの平均値は新品の状態だと1,040gだったのに対し、傷がついた状態だと504g。
つまり、ナイロンは傷がついていると新品の48%の強度しかありません。
いっぽう、フロロカーボンは新品が856gだったのに対し、傷がついた状態だと798g。
フロロカーボンは傷がついていても新品の93%の強度を保っていることがわかります。
ここで、ショアジギングのシチュエーションをちょっと確認。
「PEラインにリーダーが必要な3つの理由」で話している通り、PEラインは非常に傷に弱い性質を持っており、ショアジギングでショックリーダーを結ぶねらいはその傷の弱さをカバーすることにあります。
そう考えると、新品状態での強度の比較実験ではナイロンに軍配が上がったものの、傷がついた状態だとナイロンの強度は半分以下となる48%まで低下、対するフロロは傷がついても93%の強度をキープしているために立場は逆転。
ハッキリ数字で言い表せば、「ナイロンは傷がつくとフロロの63%の強度しかない」ということになる。
以上の結果から、耐摩耗性についてはフロロのほうがショアジギングに適したリーダーであると判断することができます。
感度
比較表ではナイロンが「低い」、フロロが「普通」とされていた感度。
この違いも結構大事なポイントになってきます。
というのも、「ショアジギングでPEラインを選ぶ真の理由」でお話ししている通り、ショアジギングのようなルアーフィッシングでは感度の高さは必須条件です。
海という広大なステージで広範囲を探りながら釣りを展開するショアジギングにおいて、伸びの少ないPEをメインラインに据えることで感度を高めているわけですから、ショックリーダーもなるべく伸びの少ないものを使って感度の高さを保ちたいところ。
そういった観点から、耐摩耗性に続いて感度の項目でもフロロのほうがショアジギングに適していることがわかります。
屈折率
屈折率を簡単に言い換えると「物質の中に入った光の速度を表す指標」であり、この数値が近ければ近いほど同じ見え方になるということ。
というのも、我々釣り人側からすれば、ルアーは海中で見えてもらわないと困るけど、ラインは見えてもらっては困るもの。
まぁ、魚が「糸がつながってるからこれはエサじゃなくルアーだな。」と判断する能力がどのくらいあるのかはわかりませんが、釣り具メーカーが魚に違和感を与えないラインを開発し続けていることは紛れもない事実です。
そこで、フロロとナイロンの屈折率を比べてみると、フロロが1.42に対してナイロンが1.53。
水の屈折率が1.33なので、フロロのほうが水と屈折率が近く、つまりは「ナイロンよりもフロロのほうが水の中で見えにくいラインである」ということができます。
ですから、屈折率についてもフロロのほうが優れたリーダーであると言えます。
価格
最後にナイロンとフロロの価格の違いを比べてみます。
一般的に「フロロのほうが価格が高い」とされていますが実際のところはどうなのか、Amazonでレビュー数の多いショックリーダーのメーカー「バリバス」と「ヤマトヨテグス」の、最も安い価格帯のリーダーの値段を調査。
価格 | フロロ | ナイロン |
---|---|---|
バリバス(10号) | 1,748円(30m) | 1,315円(50m) |
ヤマトヨテグス(7号) | 529円(20m) | 703円(20m) |
※調査日2020年12月14日
※スマホは右にスライドできます。
両メーカーともに同じ号数の価格ですが、バリバスについては同じ長さの商品がなかったため、近い長さのもので比較しています。
バリバスはフロロが30mで1,748円、ナイロンが50mと長いのにもかかわらず1,315円ですから、やはりナイロンのほうが価格が安くなっていますが、ヤマトヨテグスでは同じ長さにもかかわらずナイロンのほうが高くなっています。
ヤマトヨテグス(YAMATOYO) フロロ ショックリーダー
レビュー数を見るとよくわかりますが、おそらく需要と供給のバランスの問題で、フロロのほうが需要が多いがゆえに供給量も増え、その結果「価格の逆転現象」が起きていると考えられます。
PEラインもそうでしたが、流通量が増えてくると商品の価格は下がる傾向にあるため、フロロは今後さらに購入しやすいショックリーダーになるかもしれませんが、いずれにしてもメーカーやグレード、号数によって価格に結構なバラつきが出ている状況なので、今回の調査の結果では「フロロはナイロンより高い」と一概には言えないと感じました。
まとめ
ショアジギングのショックリーダーにふさわしい材質のラインはフロロとナイロンのどちらなのか、両者の違いの要点をまとめます。
- フロロは吸水性がないため長期間使用できる
- 新品の強度はナイロンのほうが高く、フロロはナイロンの82%の強度しかない
- 傷がついたときの強度はフロロのほうが高く、ナイロンはフロロの63%の強度しかない
- 感度は伸びの少ないフロロのほうが高い
- 屈折率はフロロのほうが水に近いため水中で見えにくい
- 価格はメーカーや号数によってバラバラ
これらの要素をまとめると、ナイロンを使うメリットは「新品の状態なら強度が高い」というただ1点だけ。
いっぽうフロロであれば、吸水性がなく傷に強いため長期間使うことができ、感度も高くて水中で見えにくいため魚にバレづらく、新品時の強度もナイロンの82%は確保できていると評価することができます。
したがって、「ショアジギングでショックリーダーとして使うならフロロとナイロンのどちらがおすすめなのか」と問われたら、私は迷うことなくフロロカーボンをおすすめします。
この記事が、あなたの趣味をより豊かにできますように。
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