「250㏄のビッグスクーターで高速道路を快適に走ることはできるのか?」
車検なし、車両価格はお手頃価格、しかも高速道路も走行できるという250㏄のビッグスクーターですが、実際のところ快適に走ることはできるのか、果たしてそれは実用的と言えるのか、疑問に感じている方も多いでしょう。
そこで今回は、250㏄のビッグスクーターは構造的に高速道路走行にふさわしいレベルにあるのか、そして実際に高速道路を走行したときの感想を含め、高速道路を走るときに気をつけておくべき注意点をまとめます。
この記事を読むことで、次のようなことがわかります。
- 250㏄のビッグスクーターで快適な高速道路走行は可能か
- 250㏄のビッグスクーターで高速道路を走るときに気をつけるべき注意点はなにか
250㏄のビッグスクーターで高速道路を走るのは実用的なのか?
巷では、同排気量のバイクと比べて「ビッグスクーターは高速道路で遅い」「高速道路を使ったクルージングには向いていない」といったような噂が流れているようです。
そこでこの章では、それらの噂は果たして本当なのか検証してみました。
比較するのはビッグスクーターとマニュアルのバイク(スポーツ、ネイキッドなど)で、比較内容は運動性能と物理的な特徴です。
したがって、この章を読むことで「ビッグスクーターで高速に乗るのは法律的に何も問題ないけど、果たしてそれは実用的なのか?」という疑問を解決できます。
パワーウェイトレシオの比較
まずは、乗り物の加速性能の指標として代表的なパワーウェイトレシオを比較してみます。
パワーウェイトレシオは「車重÷馬力(PS)」で求めることができ、一般的に数字が低ければ低いほど加速性能が高いと言えます。
ですので、このパワーウェイトレシオランキングを見ることによって、ビッグスクーターとマニュアルのバイクにはどれだけの加速性能の差があるのかがわかります。
なお、このランキングでは2018年度の販売台数が多いバイクとビッグスクーターのみピックアップしています。
順位 | 車種 | パワーウェイトレシオ(kg/PS) |
---|---|---|
1 | ホンダ・CBR250RR | 4.39 |
2 | カワサキ・Ninja250 | 4.49 |
3 | ヤマハ・YZF-R25 | 4.86 |
4 | ホンダ・レブル250 | 6.54 |
5 | スズキ・GSX250R | 7.42 |
6 | ヤマハ・XMAX | 7.78 |
7 | スズキ・Vストローム250 | 7.88 |
8 | ホンダ・フォルツァ | 8.00 |
ランキングの1番上と下に注目してください。
ホンダのスポーツバイクであるCBR250RRのパワーウェイトレシオは4.39kg/PSで、これは車だと1992年発売のNSX type-Rと同じです。
一方ランキング8位、ホンダのビッグスクーターであるフォルツァのパワーウェイトレシオは8.00kg/PSで、これは2004年発売のハリアー、2000年発売のクラウンエステート Royal-saloon、1993年発売のロードスター V-Specialと同じです。
つまり、パワーウェイトレシオの数字だけで判断すれば、CBR250RRのようなスポーツバイクとフォルツァのようなビッグスクーターが一緒にツーリングをした場合、車だと以下のように表現しなおすことができます。
「どちらかというとスーパーカーに近いスポーツカーNSXと、ハリアー、クラウンエステートのような一般大衆向けの車が一緒にドライブに出かける。」
ということは、サーキットやクネクネの峠道なら加速性能の差が出るとは思いますが、高速道路においてはアクセルを大きく開けて加速するエリアは限られていますし、一定速度で走るクルージングのシーンでは、加速性能の差というのはあまり問題にならないと言えますね。
トルクウェイトレシオの比較
もうひとつ、車の加速性能を表す指標として参考になるのがトルクウェイトレシオです。
というのも、車やバイクのパワーを表すとき、一般的には「○○馬力」といったようにPSという単位が用いられますが、もうひとつの指標となるトルクはN・mという単位が用いられます。
本題からそれるのであまり詳しくは解説しませんが、簡単に言えばエンジンの回転の速さを表すのが馬力(PS)、その回転の力強さを表すのがトルク(N・m)です。
ですので、スポーツカーのエンジンは速く走るために馬力が高くなっており、それとは逆に、重い荷物を積むトラックのエンジンは力強さが必要なのでトルクが高くなっています。
つまり、トルクウェイトレシオランキングを見ることによって、ビッグスクーターとマニュアルのバイクにはエンジンの力強さにどのくらいの差があるのかがわかるのです。
なお、トルクウェイトレシオは「車重÷最大トルク」で求めました。
順位 | 車種 | トルクウェイトレシオ(kg/N・m) |
---|---|---|
1 | カワサキ・Ninja250 | 7.22 |
2 | ホンダ・CBR250RR | 7.26 |
3 | ヤマハ・YZF-R25 | 7.39 |
4 | ヤマハ・XMAX | 7.46 |
5 | ホンダ・フォルツァ | 7.67 |
6 | ホンダ・レブル250 | 7.73 |
7 | スズキ・GSX250R | 8.09 |
8 | スズキ・Vストローム250 | 8.59 |
先ほどのパワーウェイトレシオランキングでは上位3台のスポーツバイクが飛び抜けていましたが、このトルクウェイトレシオランキングでは差が詰まっていますね。
これはつまり、エンジンを回転させる力強さには大きな差がないということです。
ここで、高速道路でエンジンの力強さが必要なシーンを想像してみてください。
本線への合流、追い越し、長い上り坂などが思いつきますが、そもそもトルクに大きな差がないということは、これらのシーンでもあまり影響がないと考えることができます。
バンク角の違い
ビッグスクーターとマニュアルのバイクの物理的な特徴を比較したとき、大きく異なるのはバンク角の違いです。
バンク角とは、車体を傾けたときの角度のことを指します。
コーナリングのとき、バイクのような二輪車は車体を傾けてカーブを曲がります。
バイクレースを思い浮かべてもらうとわかりやすいですが、ライダーはヒジやヒザを地面に擦りつけるようにしてコーナーを曲がっていきますよね。
これはつまり、速いスピードでコーナーを曲がるためには車体を大きく傾ける必要があるということです。
ビッグスクーターはスポーツタイプやネイキッドなどのバイクと構造が異なるため、バイクレースのように車体を傾けようとしてもセンタースタンドなどを擦ってしまい、大きく車体を傾けることができません。
ですから、速いコーナリングには向いていないという物理的な特徴を持っているのです。
しかし、裏を返せば高速道路のような直線がメインの環境では、このバンク角の浅さはさほど大きなデメリットにはならないとも言えるわけですね。
カウルに覆われていることで高い風防効果が期待できる
マニュアルのバイクと比べ、ビッグスクーターはその車体のほとんどをカウルで覆われています。
全身で風を浴び続ける開放感はツーリングの大きな魅力のひとつですが、逆に長時間風を浴び続けることは疲労を増やす原因にもなります。
そういった観点から見ると、カウルで覆われ大きなスクリーンが付いたビッグスクーターは、ライダーの身体を風から守ってくれるというメリットを持っているわけですね。
ビッグスクーターで高速道路を走ることは充分に実用的である
以上の検証結果から、ビッグスクーターとマニュアルのバイクの特徴をおさらいすると、以下のような答えを導き出すことができます。
- ビッグスクーターで高速道路を走るとき、ツーリング仲間のバイクが同排気量であれば特に問題なく巡航できる(トルクに大きな差がなく加速する場所も限られているため)。
- ビッグスクーターで高速道路以外(峠道やサーキット)を走るとき、仲間のバイクがスポーツタイプのバイクだとついていけない可能性が高い(加速性能とバンク角に大きな差がある)
このように、高速道路という環境下においてはビッグスクーターのデメリットは現れづらく、逆に高い風防効果を期待できるといったメリットを得られるという検証結果となりました。
次の章では、筆者自身が実際に250㏄のビッグスクーターで高速道路に乗ったときの感想をまとめます。
250㏄のビッグスクーターで高速道路を走って感じた4つのこと
この記事を書いている筆者はスズキのスカイウェイブという250㏄のビッグスクーターを5年前から所有しており、これまで何度も高速道路を走りました。
そこでこの章では、250㏄のビッグスクーターで高速に乗ったときの感想を率直にお話ししていきたいと思います。
この章を読むことで、メーカーの謳い文句やネット上で囁かれている情報に振り回されることがなくなるはずですよ。
巡航速度までの加速は問題なし
大半の高速道路の制限速度は時速100kmとなっており、高速道路をツーリングするときの巡航速度は80~100kmが一般的だと思います。
上述のパワーウェイトレシオランキングでも確認できたように、排気量250㏄のビッグスクーターは二輪車の中で速い方とは言えませんが、それでも一般車に比べてレスポンスが高い乗り物です。
車との比較はこちらで。>>>バイクのすり抜けをうざいと感じるドライバーの心理とは?
ですので、高速道路の料金所を通過した直後の加速、さらには本線に入る合流地点での加速において不満を感じたことはありませんし、巡航速度までは至ってスムーズに流れに乗ることが可能です。
巡航速度プラスアルファの加速には余裕がない
しかし、一度巡航速度に達してからの再加速にはあまり余裕が残されていません。
なぜなら、250㏄という排気量は二輪車の中では小さい部類に入るため、その基本設計は「高速道路を快適に走る」というよりも、「一般道路をストレスなく走る」という一言に尽きます。
ですから、例えば高速道路で追い抜きをする際にはアクセルを大きく開け続けなければなりませんし、追い越しの際には余裕を持ったタイミングで追い越し車線に入る必要も出てきます。
最高速度が60kmの一般道では流れをリードできる250㏄のビッグスクーターですが、最高速度が100kmの高速道路ではそうもいきませんし、これが排気量の限界というものでしょう。
高速ではエンジンがうなりがち
ビッグスクーターで高速道路を走るとき気になるのはエンジンの回転数の高さです。
というのも、筆者の所有している250㏄のスカイウェイブはタコメーターが11,000回転まで表示されていますが、高速道路を走行中はこの中でもかなり高回転な領域を使い続けることになります。
二輪車のエンジンは車と比べて高回転型ですが、それでもやはり250㏄という排気量で高速道路を走るということがいかにエンジンに負荷をかけているのかが実感できる瞬間でもあるのです。
レスポンスの良さから軽々と巡航速度に達するものの、一旦その速度域に入ってしまえばあとはひたすらエンジンがうなり続けるのを見守るしかありません。
いくら高回転型のエンジンだとはいえ、回転数が高くなれば音も大きくなりますし、振動も大きくなって快適性は失われます。
ですから、250㏄のビッグスクーターで高速を走るということは、「頑張って車の流れについていく」といった意味合いの強いクルージングになることを覚悟しておくべきです。
高速では横風の影響を強く受けがち
マニュアルのバイクとの比較でもお話ししましたが、ビッグスクーターはカウルによって車体正面からくる風を遮断してくれるため、ライダーの疲労を大きく軽減してくれます。
しかし、全体がカウルで覆われているということは、横からの風による影響も受けやすくなってしまうという問題も持ち合わせています。
ですので、風の強い日やトラックが多い環境下ではストレスを感じる回数が増えてしまうことになるでしょう。
250㏄のビッグスクーターで高速を走るときの注意点
前の章でお話しした高速道路走行時の経験をもとにして、この章では250㏄のビッグスクーターで高速道路を走るときの注意点をまとめます。
この章を読むことで、250㏄のビッグスクーターで高速を走るときに気をつけるべきことがわかるため、高速道路走行の安全性を高めることができますよ。
タイヤの外観と空気圧のチェック
ビッグスクーターの数あるパーツの中で、タイヤは唯一道路に設置している部分です。
ですから、特に高速道路のような高い速度域で安全に走るためには、タイヤの外観に異常がないか、そして空気圧が適正値になっているかという確認は最低限行っておくべき項目です。
空気圧をチェックするときのポイントは2つです。
- タイヤの温度が低い状態で空気圧チェックをする
- しばらく乗っていなかったときは再度空気圧チェックをする
まずひとつめですが、タイヤの空気圧をチェックするタイミングは「タイヤの熱が低い状態で行う」ことが重要です。
というのも、バイクに限らずタイヤは走ると熱を持ちます。
熱を持つということは空気が膨張するということで、つまり長時間走行したときのタイヤは空気圧が高まっている状態にあるということです。
ということは、熱を持っている状態で空気圧チェックをしても、それは空気圧を本当の適正値にできたかどうかがわからないということになるのです。
ですので、空気圧をチェックするタイミングとしては出発前に自宅で、あるいは自宅から最も近いガソリンスタンドで行うようにします。
そしてもうひとつ、しばらくビッグスクーターを走らせていなかったときは必ず空気圧をチェックしましょう。
タイヤは密閉性の高い構造になっていますが、それでも放置していれば空気は自然に抜けていくものです。
バイクやビッグスクーターという乗り物の特性上、「乗るのは休日だけ」「晴れた日だけ」という人も多いと思うので、特に高速道路の走行前には必ず空気圧のチェックを行うようにしましょう。
二輪車の場合、タイヤから「コーナリングが安定しない」とか「わだちでタイヤが取られやすい」といったようなサインが現れることがあるので、そういった違和感を感じたときも積極的に空気圧のチェックを行いましょう。
ガソリンの残量チェック
続いてはガソリンの残量チェックです。
ビッグスクーターのような二輪車は乗り物の中で比較的低燃費な部類に入りますが、車体が小さい分ガソリンタンクの容量もそれほど余裕がありません。
例えば僕の所有するスカイウェイブの燃費は現在リッター27kmほどですが、燃料タンクの容量は13ℓなので、航続可能距離は単純計算で351kmです。
航続可能距離が1,000kmを超える車が増えてきた現在では、この351kmという数字はかなり低い数値のクラスですし、高回転でエンジンが回り続けるために「高速は燃費がいい」という乗り物あるあるも当てはまりません。
実際、スカイウェイブで片道700km、往復1400kmを高速道路を使って走行したときの燃費は26km~28kmほどだったので、普段とほぼ同じでした。
ですので、高速道路を走行する際は目的地まで燃料が持つかどうか、もし持たないとしたらどこで給油をするべきかをあらかじめ決めておくと安心です。
服装&天気予報
続いての注意点は、服装と天気予報のチェックです。
ビッグスクーターに限らず、屋根のない二輪車は天候の変化による影響を受けやすいので、特に高速道路を走行する前には服装と天気予報のチェックは欠かせません。
というのも、ごく当たり前のことではありますが、高速道路では渋滞がない限り止まることはありません。
止まることがないということは、ずーっと走り続けるということで、ずーっと走り続けるということは身体が冷えやすくなるということで、そのうえ一般道に比べて速いスピードで走り続けるわけですから、その現象はより顕著に表れます。
しかし、高速道路では例外を除いて駐停車禁止となっていますから、例えば「寒くなってきたから着替えよう」「雨が降ってきたからカッパ着よう」みたいな軽い気持ちで路肩に止まるわけにはいかないのです。
仮に路肩に停車して着替えをし、運よく警察に捕まらなかったとしても、その場所は100km前後で車が行き交う自動車専用の道路上です。
僕は以前高速道路の管理を行う仕事をした経験があるためよくわかりますが、高速道路の路肩は非常に危険な場所であり、そこで安易に停車するのはとてもリスクの高い行為です。
簡単に言えば「即死する確率が高い場所」なわけですからね。
ですから、高速道路を走行する前に、降水確率や雨雲レーダーの確認はもちろん、気温や風の強さなども確認しておくと、より安全にツーリングすることができるようになります。
料金所
続いては、高速道路の出入り口となる料金所での注意点です。
まずETC車載器を取り付けてあるビッグスクーターであれば、車と同じように「カードの入れ忘れ」と「ETCゲート通過時は徐行する」という2点に注意すれば問題ないでしょう。
一方、ETC車載器のないビッグスクーターの場合は、以下の2点に注意しなければなりません。
高速道路料金をあらかじめ調べておく
ETC車載器がないビッグスクーターの場合、料金所の出口では一旦停止して料金を支払いするわけですが、グローブの脱着や財布の出し入れなど、非常に手間のかかる手順が待ち受けています。
そこで、高速道路料金がいくらかかるのかをあらかじめ調べておくことによって、料金所の精算を慌てずに済ませることができるので、ツーリングの前日などにあらかじめ調べておくことをおすすめします。
250㏄のビッグスクーターの高速道路料金は軽自動車と同じ扱いとなるので、車種区分は「軽自動車等」を選んでください。
フロントの収納ボックスにお金を用意しておく
ビッグスクーターには、大抵フロント部分に収納ボックスが備わっています。
そこで、あらかじめ調べておいた必要なお金を収納ボックスに入れておけば、料金所での支払いをスムーズに行うことが可能になります。
こうすることで、料金所の入り口で通行券を受け取る際も、料金所の出口で料金を支払う際も慌てることなく手順を済ませることができますね。
高速道路の合流時
料金所で無事に通行券を受け取ったら、続いては本線への合流をするわけですが、ここでもビッグスクーター特有の注意点があります。
それは、ビッグスクーターはミラーが小さいため死角が多いということです。
車と比較すると、ビッグスクーターのミラーは小型なため見渡せる範囲が狭く、車線変更や合流地点では死角が生まれやすくなります。
ですので、合流地点はもちろん車線変更の際も、常に死角が多いということを念頭に置いて、目視による安全確認を丁寧に行いましょう。
幸い、加速力については申し分ない能力が備わっているので、合流する車列の速度に合わせてしっかり加速をして合流を済ませましょう。
高速道路の本線走行時
続いては、実際に高速道路の本線を走行するときの注意点です。
縦よりも横風に注意
ビッグスクーターで走ったときに感じたことをまとめた章でもお話ししましたが、ビッグスクーターは車体の大部分がカウルで覆われているため、前からくる風を広い範囲で遮ってくれるものの、その分横からの風を受けやすいという特徴を持っています。
ですので、高速道路の本線を走るときには、前からくる縦の風よりも、自然風や大型車などの風圧といった横の風に注意しなければならないのです。
具体的に横風に気をつけるべきポイントは以下の3つです。
- 風の強い日
- トンネルの出口
- 高い橋の上
- バスやトラックなどの大型車とのすれ違い
この中でも特に注意するべきポイントは、大型車が隣りのレーンに並んでいるときの横からの風圧です。
簡単なものですが、以下の図をご覧ください。
水色の矢印のように、大型車の前方では車両の外側に向かって気流が発生しているため、こちらが追い越し車線から追い抜くときには右側に押される形になります。
このケースではこちら側のタイミングで隣りに並ぶのでさほど問題ありませんが、反対に追い抜かれるときには要注意です。
まず、大型車が追い抜きをして隣りに並んだ段階では、先ほどと同じように大型車の外側に向かう気流によって左側に押される形になります。
上述したように、250㏄という排気量だとあまり余裕が残されていないため、100km制限の高速道路を80km程度で走る場面も多々あるはずです。
必然的に大型車に追い抜かれる回数も増えますが、このように左側、つまり路側帯に押し出される形で気流が発生していることを常に意識しておけば、強い横風にも慌てずに対応することができます。
景色に見とれて前や横ばかり見ていると、不意の追い越しによる風圧でバランスを崩しかねませんから、定期的な後方確認は必ず行うようにしましょう。
その後、隣りに並んだ大型車が徐々に前方に出ていくときには、今度は水色の矢印のように大型車側に巻き込むような気流が発生します。
つまり、押される気流から今度は吸い込まれる気流に変わるということですね。
ですので、特に追い抜かれるときにはこういった気流の変化があることを念頭に置いて、周囲の交通状況の把握に努めましょう。
車間距離は広めに
一般道でも言えることですが、二輪車で車の後方を走るときには車間をやや広めにとっておくことも大切です。
なぜなら、四輪である車と二輪のビッグスクーターでは走行ラインが異なるため、万が一落下物があったときに回避できる猶予をとっておくことが必要だからです。
以下の図をご覧ください。
青が四輪車のタイヤが通るライン、赤が二輪車のタイヤが通るラインです。
車線の真ん中に落下物がありました。
車だと落下物は車体の下を通過するため、問題なく通り過ぎます。
四輪車は難なく通過できましたが、このままだと二輪車はこのように落下物を踏んでしまうことになります。
車間距離を広くとっていれば落下物を回避できる可能性が高まりますが、前の車に張り付くような車間距離で走っていればそれもできません。
さらに、四輪車であれば落下物を踏んでも横転する可能性は低いですが、二輪車が落下物を踏んでしまった場合は最悪転倒してしまう危険性もあるのです。
高速道路では、1年間で実に34万5千件もの落下物処理が行われています(2017年度)。
「追突を防ぐため」「渋滞の原因を減らすため」という意味で車間距離を広くとる行為は車とも共通する交通モラルですが、特に二輪車ではこういった落下物からの危機回避もできるようになるので、車間距離を広くとるということはとても大切なのです。
走行ラインは車線の真ん中~やや左をキープ
ビッグスクーターで高速道路を走るときの走行ラインですが、走行車線の真ん中からやや左をキープするのがベストだと考えられます。
というのも、100km制限の高速道路では、実際のところ100kmで走っていてもどんどん後方から抜かれます。
日本の運転免許の所持率は車が90%、バイクが0.2%ですから、物理的に車よりも小さい二輪車があまりにも道路の左端に寄っていると幅寄せをされる可能性が高まりますし、下図のように追い越し車線を走る車の死角に入る時間も長くなります(日本の運転免許の所持率)。
かと言って走行車線の右側、つまり追い越し車線側に寄って走っていると、今度は大型車に追い抜かれた際の風圧をもろに受けることになります。
ですから、250㏄のビッグスクーターで高速道路を走るときは「走行車線の真ん中~やや左」をキープするように心がけましょう。
雨天時は白線、橋の継ぎ目(鉄のギザギザのやつ)に注意
屋根のないビッグスクーターでは、できれば雨天での走行は避けたいところですが、それでも突然の天候変化で雨の中を走ることもあるでしょう。
そういった雨天走行時に注意したいのは、車線を区切っている白線と橋の継ぎ目のギザギザした鉄製の部分です。
横断歩道を歩いているときに白線で滑った経験を持つ人もいるかと思いますが、実際、白線のすべり抵抗値はアスファルトに比べて滑りやすい値になっているので、車線変更などで白線上を走行するときには充分に注意するべきポイントです。
もうひとつ、特に雨の日に気をつけなければならないのは橋の継ぎ目にある鉄製のギザギザしたものです。
このギザギザは伸縮装置と呼ぶそうですが、一般道でよく滑りやすいと言われるマンホール同様、やはり鉄製である伸縮装置は非常に滑りやすい箇所です。
ですので、できれば伸縮装置がある橋の近辺では車線変更を避けるべきですし、首都高速のような全線が橋脚になっているエリアでは雨の日の走行には細心の注意が必要です。
幸い、筆者は伸縮装置で転倒したことはありませんが、踏切を渡るときにレールで滑って転倒しかけた経験があります。
こまめに休憩を
最後の注意点としてあげるのは、走る時間をなるべく細かく刻んでこまめに休憩をとるということです。
排気量の大きな二輪車とは異なり、250㏄のビッグスクーターで高速道路を走ると肉体的な疲労が溜まりやすいですから、サービスエリアでお土産を探すのもよし、一服して新鮮な空気を吸うのもよし、いろんな場所で休憩するのもいい旅の思い出になるはずです。
まとめ
- 250ccクラスのビッグスクーターとマニュアルのバイクを比較した場合、高速道路の走行においては運動性能の差が生まれづらいため、充分に実用的である
- 250㏄のビッグスクーターで高速に乗った場合、巡航速度まではストレスなく加速できるが、流れをリードできるほどの余裕はない
- 巡航速度のエンジン回転数が高いため、燃費の向上は期待できない
- 特に大型車とのすれ違いによる横風の影響には注意
とはいえ、高速道路を使う頻度が低いと予想されるのであれば、割り切って250㏄のビッグスクーターを選択するのもありですし、逆に通勤などで頻繁に高速に乗るということであれば400㏄、あるいは大型クラスの排気量を選ぶ方が賢明だと考えます。
ビッグスクーターの購入を検討している方であれば、原付とビッグスクーターを比較したこちらの記事も役に立つはずです。>>>原付から250ccのビッグスクーターに乗り換えたリアルな感想
Copyright secured by Digiprove © 2019