2017年、夏の移籍市場で、ブラジル代表のネイマールがバルサからPSGに電撃移籍、その移籍金は史上最高額の290億円。
選手一人に290億円出すクラブ、日本じゃ考えられません。
ということで今回は、ヨーロッパ主要リーグとJリーグの外国人枠に対する考え方の違いを考えてみます。
現在は多くの日本人選手がヨーロッパのクラブに在籍するようになりましたが、プロサッカーリーグは世界中にあるのに、なぜヨーロッパにたくさんの外国人選手が集中するのでしょうか。
その答えは、ヨーロッパ主要リーグの外国人枠に対する考え方にあります。
ここから、ヨーロッパ主要リーグと日本のJリーグを比較し、そこに生まれているサッカーの価値観の違いを紐解いていきます。
UEFA・チャンピオンズリーグ決勝のスタメンから見えてくるヨーロッパの外国人枠の全体像
UEFA・チャンピオンズリーグ(以下UEFA・CL)、つまり「ヨーロッパのクラブ№1」を決める2016-17シーズンの決勝。
イタリアのユヴェントス対スペインのレアルマドリードという、両国を代表する名門クラブチームが、お互いの威信をかけて戦ったこの決勝のスタメンを振り返ってみます。
まず、サッカーのピッチに立てる選手の数は、ご存知の通り1チーム11人。
しかし、この決勝の両チームのスタメンを見ると、ユヴェントスのイタリア国籍の選手はわずか4人、対するレアルマドリードのスペイン国籍の選手はさらに少ない3人でした。
ではなぜ、イタリアのクラブなのにイタリア人が4人、スペインのクラブなのにスペイン人が3人しかいなかったのでしょう。
Jリーグの主軸は日本人
日本のJリーグでは、1チームで5人まで外国人選手を登録でき、1試合に3人まで出場させることができます(AFC加盟国枠1人+Jリーグ提携国枠1人を使えば5人まで)。
Jリーグのイメージはこんな感じ。
最大の3人まで出場させた場合です。
フォーメーションは思いつきで4-2-3-1にしましたが、いずれにしても、11人というスタメンに入ることができる外国人の数は最大3人です。
しかし、この1試合3人までという人数は、あくまでも「日本のJリーグの規定」に過ぎません。
国によってその人数や条件は様々で、上述のイタリアやスペインのクラブチームでは、多くの外国人選手が出場できる規定になっています。
ヨーロッパ主要リーグの主軸は外国人
2016-17UEFA・CL決勝のレアル・マドリードのスタメンはこんな感じ。
さすが銀河系軍団、実に色とりどりです。
先ほどお話しした通り、レアル・マドリードはスペインのクラブチームですが、スタメンに名を連ねたスペイン人は3人だけ。
そのため、日本のJリーグと比べると、外国人の数と自国の選手の割合がまるで逆になっていますが、ヨーロッパのサッカーシーンでは、ごくごく当たり前の光景です。
ヨーロッパに外国人選手が集まる大きな要因は、「外国人枠の規定」にあるのです。
ヨーロッパの外国人枠の具体例
今お話ししたように、ヨーロッパで強豪と呼ばれるリーグのほとんどでは、外国人枠の扱い方が日本と比べて大きく異なります。
具体例をあげてみます。
- そもそも、外国人枠がない(イングランド・ドイツ・オランダ)
- EU圏内の国籍を取得すれば外国人として扱われない
- 外国出身であってもクラブの生え抜きであれば外国人として扱われない
3番についてはリーグにもよって異なりますが、おおむねこのような規定が設けられています。
1番については文面の通りなので説明する必要もありませんが、下の2つについてはちょっとピンときませんね。
では、ここで出てきた「EU圏内」「生え抜き」という2つのキーワードについて、さらに踏み込みます。
EU圏内とは?
「欧州連合・European Union」の頭文字をとって「EU」と呼んでいます。
EUをものすごくざっくり説明すると、EU加盟国が協力しあうことで多くの経済効果を生み出す地域統合体のことです。(この辺は大人の事情もあるので詳しくはGoogle先生に聞いてください)
そして、フランス・ドイツ・イタリア・オランダ・イギリス・スペイン・ポルトガルなど、ヨーロッパのサッカー大国もほぼもれなく加盟しているEU加盟国数は2018年現在、実に28ヶ国。
ヨーロッパの強豪リーグでは、この28ヶ国のうち、どれかひとつの国籍を取得すれば外国人扱いをされなくなります。
EU圏内の国籍を得るのは簡単?
ここで、「EU圏内の国籍を取得すれば外国人として扱われない」とお話ししましたが、「そんなに簡単に国籍を取得することができるの?」という疑問が沸いてきます。
しかし、この国籍を取得するための条件は、国によって様々なのです。
例えば日本のように、2重国籍を取得するには条件がとても厳しかったり、それとは逆に、条件さえ満たせば比較的簡単に取得できてしまう国があったりと。
そのため、EU圏内のリーグには、元々の出身地の国籍+もうひとつの国籍を持つ二重国籍の選手がたくさんいるのです。
ということから、EU圏内の国籍を取得した外国出身選手は外国人枠の制限を回避できるため、クラブはより多くの外国出身選手と契約することが可能になるのです。
ほんと、世界にはいろんな考え方があるんですね。
生え抜きとは?
先ほどの規定のもうひとつ「生え抜き」とは、養成所・アカデミーなどと呼ばれる、クラブの下部組織出身選手のことを指します。
有名なところだとFCバルセロナの「ラ・マシア」やアヤックスの「アヤックス・ユースアカデミー」など。
彼らは小さい年代から寮などで生活を共にし、練習を共にして、トップチーム昇格を目指し成長していきます。
この中には外国出身者もいますが、そういった選手に対しては、EU圏内の国籍がなくても外国人扱いをしないというリーグがあります。
下部組織で幼少から現地の子供たちと生活を共にし、その国の言葉を話し、その国の食べ物を食べ、その国の文化に馴染みながらサッカー選手として成長する。
その成長の結果、彼らがトップチームで活躍し、クラブが好成績を収めることができれば、リーグ全体のレベルアップに繋がるというのは、容易に想像がつくでしょう。
外国人扱いになるかどうかは、そのクラブが所属しているリーグの規定にゆだねられているのです。
外国人枠がないことによるリスク
今お話ししたように、ヨーロッパには外国人選手を歓迎するクラブチームがたくさんありますが、あまりにも外国人だらけになると、自国の選手が出られないといったことが出てきます。
例えば、イングランド・プレミアリーグ。
外国人枠のないこのリーグでは各国のスター選手が集まり、世界でも1番盛り上がっているリーグであることは誰もが認めるところです。
しかし、それがゆえに、自国のイングランド人選手の出場機会が減り、その結果、イングランド人選手の成長を妨げることになり、イングランド代表は国際大会でなかなか活躍できない時代が続きました。
そこでプレミアリーグでは近年、1チームに登録する選手のうち、○人以上は自国出身選手でなければならないといった規定を設けるようになり、その結果、ロシアW杯では久々にベスト4まで進出することができたのです。
現在、日本のJリーグでも外国人枠の撤廃へ動いているようですが、上述のプレミアリーグのようなリスクを避けるには、単に外国人枠の撤廃をするだけなく、自国出身選手を規定人数出場させなければならないなどの措置は必須でしょう。
まとめ
外国人枠のない、イングランド・ドイツ・オランダ。
さらに、
- EU加盟国の国籍を持っている
- クラブの生え抜きである
という2つの規定。
ヨーロッパの外国人枠の規定によって、多くのクラブチームは多国籍化し、各国のリーグ戦はもちろん、リーグ戦上位クラブが集うUEFA・チャンピオンズリーグも世界選抜の様相を呈しています。
その現状が、冒頭に紹介したような莫大な移籍金が生まれる経済マーケットを生み出しているのです。
次回は、ブンデスリーガに日本人選手が多く所属している理由を考察します>>>ドイツ・ブンデスリーガに日本人が11人所属する理由