サッカーと呼ばれるスポーツが誕生したのは1863年、実に今から約150年前のこと。
テレビやインターネットのおかげで、今では世界中のサッカーを手軽に楽しめるようになりましたが、このスポーツがどのようにして誕生したのか、どんないきさつがあって現在のサッカーの形になっていったのか、その歴史をご存知の方は決して多くはないはず…。
- サッカーの発祥の地はどこ?
- サッカー誕生はいつ?
- サッカーという名称の語源は?
そこでこの記事では、現代サッカーの誕生までの歴史を振り返り、これらの謎を解き明かしていきましょう。
この記事を読むことで、サッカー誕生の歴史はもちろん、その起源を詳しく知ることができますよ。
この記事を書いたサッカーバカな僕の誕生秘話?はこちらです。>>>サッカー嫌いがサッカーにハマったワケ
サッカーの語源
まずはサッカーの語源からです。
サッカーのスペルは「soccer」で、Association Football(アソシエーションフットボール)が転化したものです。
「アソシエーション?なんだそれ?」という人も多いでしょう。
この聞き慣れない言葉が、現代のサッカーというスポーツを表しています。
サッカーの歴史を振り返るにはまず、この語源を知っておく必要があります。
しかし、それさえわかってしまえば、なぜサッカーという名称なのか、なぜ手が使えないのかということまで簡単に覚えられてしまうのです。
サッカーの母国はイングランドと言われていますが、その真相は果たしてどうなのか…。
まずはその起源から順を追って見ていきましょう。
サッカーの起源
サッカーと言えば思いつくのはやっぱり、FIFA(国際サッカー連盟)ですよね!
FIFAのホームページでは、中国の「蹴鞠・しゅうきく」という遊戯をその起源としています。
その歴史は、紀元前300年以上前の中国が斉(せい)と呼ばれていた時代に始まります。
当時は、宮廷内で遊戯として楽しまれていたようですが、蹴鞠に熱中しすぎて仕事をさぼる人が続出し、たびたび禁止令が出されるほどの人気だったようです。
そうして禁止令が出され続けた結果、蹴鞠は清(しん:1644年~1912年)の時代にはほぼ廃れてしまうことになります。
その「しゅうきく」ですが、日本には600年代に「蹴鞠・けまり」として伝わり、現在でも伝統行事として伝承されています。
「けまり」なら知っている人も多いかも?
ということで、FIFAによればサッカーの起源は中国です。
フットボールの普及
「しゅうきく」が廃れていってしまう頃、近世のヨーロッパ各地では違ったアプローチの競技が行われており、イタリアでは「カルチョ」、イングランドでは「フットボール」という名称で発展していきました。
イングランドで行われていたフットボールのルーツは、中世のイングランド国内で行われていた「年に1度の村全体を巻き込んだお祭り」のようなもので、1個のボールを奪い合って先に目的地に運んだものが勝ち、というルールだったそうです。
まさに争奪戦ですね。
ただ、この当時のカルチョやフットボールに「競技規定という名の制限」は存在しておらず、日本の伝統行事である蹴鞠(けまり)のイメージとはかけ離れたものでした。
- 手でボールを持って運んでいい
- 相手に対してパンチ、キック、ショルダーチャージをしてもいい
このように、殺人以外なんでもありの荒々しい競技だったため、時には死者が出ることもあり、そのあまりの危険性の高さから、禁止令が何度も出されます。
しかし、人々はストレスを発散できるこの祭りにこぞって参加し、村や自分自身の名誉・名声を得ようと、やめることはありませんでした。
フットボールがスポーツとして確立するまでの道のりは、幾多の禁止令という壁を乗り越えて普及してきたという歴史があったわけですね。
村の祭りからスポーツへ
そんな荒々しいフットボールが、現代のサッカーのようなスポーツに進化したのは、イングランドのパブリックスクールでプレーされるようになったのがきっかけです。
パブリックスクールは、元々紳士を育てるためのエリート校。
現在のサッカーでも、紳士的行為、非紳士的行為といった言葉を聞くのはこのためです。
パブリックスクールにおけるフットボールでは乱暴なプレーが禁止され、プレーするエリアやフィールドが決められて、レクリエーションとして他校と交流試合を行うようになります。
ただ、明確なルールが決まっていなかったため、試合の度に話し合いをして調整をするという手間がありました。
そこでルールをハッキリさせるために協議が行われ、1846年、ケンブリッジ大学で「ケンブリッジルール」というものが立案されます。
これによって、おおまかなルールの統一化はできたんですが、
- イートン校を中心とする、手を使うことを制限するルール
- ラグビー校を中心とする、手を使うことを許可するルール
という2つの勢力に別れていきます。
簡単にいえば手を使いたい派か、足を使いたい派か、ということですね。
この隔たりを解消すること、そしてスポーツとして運用する協会を設立するため、1863年、ロンドンで会議が行われます。
この会議では、1846年に考案されたケンブリッジルールをベースに協議が行われました。
その結果、
- ボールを持って走る
- ボールを運んでいる相手にハッキング(すねをけること)
- トリッピング(引っ掛けてつまずかせること)
- ホールディング(おさえること)
が禁止となり、ラグビー校を中心とする手を存分に使いたい派の代表らは「合意できない」として協議は物別れに。
結果、手を使うことを制限するルールを主張した代表者らによって、フットボール・アソシエーション(The Football Association=FA)が創設されます。
FA(The Football Association)の誕生
このFA誕生こそが、現代サッカー誕生の瞬間なのです!
サッカーの母国がイングランドと言われる理由は、スポーツとして確立するための会議がロンドンで開かれたという事実によるものだったわけですね。
ただし、フットボールは大変人気のある競技だったので、この頃にはすでに、パブリックスクールや大学とは無関係にクラブがたくさん設立され、様々なルールでプレーされていた状況でした。
とくに中部の工業都市シェフィールドでは、FAのルールとは少し違う「シェフィールドルール」というフットボールの方が人気があり、FAは最終的にこのシェフィールドルールを取り込んで国内のルールを統一、いよいよ現代サッカーのルールが完成することになるのです。
ちなみに、先ほどの会議で物別れに終わってしまったラグビー校ですが…。
そう、その学校名の通り、手を使うルールを推していたラグビー校などの代表者らは後に、ラグビー協会(ラグビーフットボール・ユニオン)を設立することになるのです。
これはつまり、手を使うか使わないかがサッカーとラグビーの境界線になったとも言えますね。
イングランドサッカーの歴史は「サッカー強豪国・イングランド代表はモダンへ変われるのか」で詳しくまとめています。
サッカー「soccer」という名称の由来
では、なぜサッカーという名称になったのか、その由来についてです。
アソシエーション(Association)の訳は「協会」。
つまり、FA・フットボールアソシエーションのルールを基にプレーする競技は、協会式フットボール(Association Football)と呼ばれます。
当時のイングランドでは語尾に「-er」をつけ、「○○する人」と表現することが流行っていたそうです。
- rugger(ラガー)ラグビー選手
- farmer(ファーマー)農家
- writer(ライター)作家、筆者、著者
などなど、挙げればキリがないほどたくさんありますが、1990年代後半、日本でも大流行し(アムラー、シノラー、ハマダーなど)、現在でも日常的に使われているものもたくさんあります(フリーター、マヨラーなど)。
サッカーの場合は、ルールを統率する協会・Associationの略称「assoc.」の語尾に「-er」をつけることで、「soccer」となるわけです。
日本がサッカーをフットボールと呼ばないのは歴史的背景があった
世界各地のサッカーの呼び方
サッカーという呼び方は日本では一般的ですが、国や地域によって呼び方が大きく異なります。
下はほんの一例。
言語 | 表記 |
---|---|
英語 | football |
アメリカ英語 | soccer |
フランス語 | football |
スペイン語 | fútbol |
ドイツ語 | Fußball |
イタリア語 | calcio |
日本語 | 蹴球(サッカー) |
中国語 | 足球 |
ヨーロッパはもちろん、南米もスペイン語圏なので、世界の大半ではフットボールと呼ぶのが一般的ということになります。
フットボールの本来の意味は、ボールをゴールに入れるというスポーツ全般のことを指します。
つまり、村の祭りであるフットボールから細分化して生まれたスポーツの1種がサッカーというスポーツであり、ラグビーであり、アメフト(アメリカンフットボール)であるということですね。
ポイントは、単に「フットボール」と表現した場合、どのフットボールを意味しているのかは国・地域によって違いがあるということです。
フットボールから連想するスポーツと言えば…
ではなぜ、日本ではフットボールと呼ばずにサッカーと呼ぶのでしょうか。
その理由は、アメリカの文化が浸透したためです。
1945年、第二次世界大戦の敗戦でアメリカに占領された日本。
その当時の日本国内では、フットボールやアソシエーション、蹴球、ア式蹴球など、サッカーの呼び方がまだハッキリしていませんでした。
しかし、敗戦国となった日本には、勝戦国であるアメリカの文化がどんどん流入してくることになります。
その結果、世界では少数派のアメリカの呼び方(soccer)が定着化していき、フットボールと言えばアメフトという常識が築き上げられたのです。
その証拠に、FIFAに加盟している国・地域は現在「211」ですが、その211のうち、サッカー協会名にsoccerが入っているのは、わずかに「3(アメリカ・カナダ・米領ヴァージン諸島)」しかありません。
ちなみに、我らが日本サッカー協会の英語表記名はなぜか、「Japan Football Association」となっています。
サッカー誕生までの歴史のまとめ
サッカー誕生までの歴史をおさらいします。
- 起源は中国、スポーツとしての母国はイングランド
- 手を使うか使わないかでラグビーと分裂し、サッカーが誕生する
- サッカー=協会式フットボール「Association Football」
- 「assoc.+-er=soccer」サッカーの語源はアムラーと一緒
- 世界では「サッカー」ではなく「フットボール」と呼ぶのが一般的
サッカーというスポーツの誕生には、禁止令が出されてもなお続けたいと願う人々の情熱が大きく関わっていました。
次回は、誕生後から現在までの150年の歴史を10分で振り返ります。>>>150年かけて進化してきたサッカーの歴史を10分で振り返る
サッカーというスポーツを「文化」として見事に描いた2005年の名作映画「GOAL!」は要チェックしておくべきですよ。
GOAL!STEP1 イングランド・プレミアリーグの誓い(字幕版)
Copyright secured by Digiprove © 2017-2020