どんな場面でも、ルールを守ることは大切です。
1882年、サッカーのルールを決めるIFABという組織が創設され、130年以上経った今も変わらずルール改正に携わっています。
そのルール改正の歴史は、今では当たり前になっているルールが意外と最近できたものだったり、ルール改正前のサッカーの問題点が浮き彫りになっていたりと、実に興味深いエピソードが含まれています。
そこでこの記事では、サッカーのルール改正の歴史の中でも、試合に与える影響力が特に大きいルール変更を厳選してご紹介しますので、ぜひ、サッカーの新たな知恵袋を手に入れてください。
ちなみに、今の話しの中で「サッカーのルール決めてんのってFIFAじゃねーの?」と疑問を持ったあなたはまず、こちらの記事を読んで出直してください。
選手交代の人数
まずは選手交代におけるルール改正の歴史からまいりましょう。
- 1953年~1968年までは2人までで、しかも負傷した場合のみ。
- 1968年、やっと負傷関係なく2人まで交代可。
- 1995年、現行の3人までになる。
- 2018年、延長になった場合に限って4人まで交代可。
- 2022年、一昨年からのコロナ禍により一時的に5人と増やされていた交代枠は、「恒久的に5人まで交代可能」と変更。
1950年~60年代は「負傷した場合のみ。」って、昔は厳しかったんですねー。
現行の3人になったのは1995年、まだ20年ちょっとしか経ってないんですよ!(2018年時点)
ケガしないと交代させてもらえないなんて、今だったらパワハラで訴えられそうな時代もありましたが、現在では延長になった場合に限って4人まで替えられるようになったことで、3人目の交代枠も使いやすくなりましたし、より多くの選手にチャンスを与えられるようになったんですねー。
※追記…2022年7月に5人までに変更
イエローカード&レッドカードの導入
サッカーには必須の警告アイテム、イエローカード&レッドカード。
でも、国際舞台で初めて導入されたのは1970年のワールドカップだそうで。
サッカーが誕生したのが1963年だから、100年近くどうしてたんだ!?
イエロー&レッドカードの誕生秘話については、こちらで詳しく解説を。
バックパスを手で受けてはいけない
サッカーをよく見る人ならピンとくるルールですが、ゴールキーパー(GK)はバックパスを手で受けることが禁止されています。
バックパスとは、味方選手からGKに向けて意図的に足で蹴られたパス、あるいは味方選手からGKに向けたスローインによるパスのことで、実況はだいたい「○○(味方選手)がキーパーに一旦ボールを返しました。」と表現します。
このルールが導入された理由を簡単に説明すると、「あからさまな時間稼ぎをするな」ってことです。
このルールがない状態を想像してみましょうか。
自陣のゴール前でパスを回していて、相手選手のプレッシャーでピンチに陥ったディフェンスは「とりあえずGKにバックパス」します。
バックパスを手で処理できるGKはボールをキャッチしてピンチを簡単にしのげました。
さらに、試合中に同じ展開に何回も遭いましたが、やっぱりGKにバックパスをして難を逃れることができ、しかも時間稼ぎができましたとさ。めでたし、めでたし。
ってことになってしまいます。
ルール改正前の1990年のワールドカップイタリア大会は、こういった見苦しい時間稼ぎをするチームが多かったので、「ワールドカップ史上最もつまらない大会」とまで言われました。
その悪評を受けて、1992年にこのルールが導入されたわけですね。
めでたし、めでたし。
勝ち点の変更
1990年の史上最もつまらないワールドカップ、イタリア大会の悪評を受けて、もうひとつ、勝ち点制度も変更になりました。
一応、1994年のアメリカ大会から導入された現行の勝ち点制度はこちらです。
勝ち | 3点 |
引き分け | 1点 |
負け | 0点 |
一方、ルール改正前の1990年、イタリア大会までの勝ち点制度はこうでした。
勝ち | 2点 |
引き分け | 1点 |
負け | 0点 |
以前のルールだと、引き分けでも「まぁまぁ良かったじゃん?」の結果になってしまうわけですよ。
例をあげると、この90年イタリア大会でのアイルランド代表とオランダ代表は、グループリーグの3試合すべてを引き分けたのにもかかわらず決勝トーナメントに進出しました。
そして、特にアイルランド代表はラウンド16のルーマニア戦をPK戦によって勝ち上がったため、1勝もせずにベスト8まで進みました(PK戦は記録上引き分け扱いのため)。
これでは、観客も眠くなってしまいますよね。
キーパーチャージの廃止
ルール改正前までは、ゴールエリア内でキーパーチャージと呼ばれる特別待遇により、手厚い保護を受けていたジーケーことゴールキーパー。
しかし、このルールが廃止されたことでGKはフィールドプレイヤーと対等にボールを競り合わなければならなくなったため、結果、GKはより高いフィジカルを求めてトレーニングに励むようになりました。
キーパーチャージというルールは日本がワールドカップに初出場した前年の1997年に廃止。
今でもテレビ中継で話題に出ることがありますが、キーパーチャージという単語自体はもう死語なので使わないように。
GKのボール保持の時間変更
ボールをキャッチしたGK、そのあと味方に指示を出したりしながらうろうろ歩くときありますよね?
一応ルールが決まっているようで、2000年まではGKがボールを手で保持できる時間は4秒まで、さらに4歩以上歩いてはいけないというルールだったようですが、今では歩数制限がなくなって、時間も6秒までと変更されたそうです。
ルールブックでは、「6秒を超えて保持した場合相手に間接フリーキックが与えられる」と規定されています。
しか~し、時間稼ぎのための遅延行為として注意、またはイエローカードが提示されるシーンはよく見ますが、間接フリーキックになったのは1回も見たことがないですねぇ。
おかしいですねぇ。
誤審を防ぐゴール機械判定システムの導入
ゴール機械判定技術(ゴールライン テクノロジー・GLT)
近年では映像技術の進化によって、リプレイで誤審が判明するケースが増え、大きな課題として議論されるようになっていました。
今でも脳裏に焼き付いているのは、2010年ワールドカップ南アフリカ大会の決勝トーナメント1回戦、イングランド×ドイツ戦で、フランク・ランパードがミドルシュートを放ったシーンです。
クロスバーに当たって地面に跳ね返ったボールは「完全に」ゴールラインを越えていたのに、なぜか主審はノーゴールの判定。
僕はイングランドのファンではないけど、強豪国同士の対戦というのもあって、この明らかな判定ミスにはガッカリましたねー。
そんな誤審を防ぐため、2012年、ついにゴール機械判定技術が導入されます。
その名も「ゴールラインテクノロジー(Goal line Technology)」、通称GLT。
なにやら速そうな名前ですが、その名の通り7台ものハイスピードカメラでボールがゴールラインを超えたかどうかを瞬時に判断し、主審の腕時計に1秒以内にお知らせしてくれるというハイテク技術です。
それと共に、ゴール脇に1人ずつ追加副審を置き、特にゴール前での微妙な判定に対する精度を上げるためのルール改正が行われました。
ビデオ アシスタント レフェリー・VAR
2017年のコンフェデレーションズカップにおいて、大きな国際舞台では初めて導入された新たなルール、「ビデオアシスタントレフェリー(Video Assistant Referee)」、通称VAR。
ゴールシーンや選手の退場など、試合の行方に大きな影響を与える場面での判定をVTRで振り返って誤審を防ぐというルール改正で、2018年のワールドカップロシア大会でも初めて導入されました。
ただ、この制度についてはやや問題点があるため、現在でも反対する関係者も多く、しばらくは議論が続きそうです。
噂のVARについてはこちらで言及しています。
まとめ
1863年のサッカー誕生から150年の歴史の中では、幾度となくルール改正が行われてきました。
- 選手交代人数の変更
- カードの導入
- バックパスの制限
- 勝ち点制度の変更
- GKの特別待遇はく奪
- GKのボール保持の自由度変更
- GLT・VARというハイテク技術の導入
ただし、これまでのルール改正には共通のコンセプトが3つありました。
- 試合が円滑に進むこと
- 見ている側がわかりやすいこと
- 見ている側が退屈しない試合展開になること
5年後、そして10年後、新たなルール変更が行われているかもしれませんが、いずれにしてもこの3つのコンセプトから外れていないルール改正であることを強く願います。
現在のサッカーを司るIFABを作った母国イングランドなど、サッカー強豪国の特徴についてこちらで詳しくまとめています。ぜひ読んでみてください。
