FIFAワールドカップと、FIFAクラブワールドカップ。
響きは似ているこの2つの大会ですが、参加するチームは大きく異なります。
文字の違いで言えば、「クラブ」が入っているかどうかだけですね。
ということは、ワールドカップとクラブワールドカップの違いを知るには、「クラブ」がキーワードとなります。
この記事では、クラブとは一体何なのかを解明し、ワールドカップとクラブワールドカップの違いをハッキリさせます。
サッカーにおけるクラブとは
まず、サッカーにおけるクラブとはなにかを簡単に解説します。
クラブとは、各国のプロサッカーリーグに所属している「クラブチーム」のことを指します。
プロサッカーリーグとは、例えば日本ならJリーグ、ドイツならブンデスリーガ、イタリアならセリエAなどと呼ばれ、シーズン中は週1~2回のペースで試合が行われています。
クラブチームとは、日本なら鹿島アントラーズや浦和レッズなど、ドイツならバイエルン・ミュンヘンやドルトムント、イタリアならユベントスやインテル、ACミラン、スペインならレアル・マドリードやバルセロナ、イングランドならマンチェスター・ユナイテッドやチェルシー、アーセナルなどが有名です。
そしてクラブチームは、サッカー選手、監督、コーチなどの大勢のスタッフと契約を交わし、彼らにお給料(年俸)を払ってリーグ戦やカップ戦を戦います。
今のはクラブの支出ですが、反対にクラブの収入源としては、大きく分けると以下のようなものがあります。
- スポンサー企業との契約料
- スタジアム入場料などの興行収入
- リーグ戦やカップ戦などの賞金
- テレビなどの放映権料
- ユニフォームなどのグッズ売り上げ
クラブの収入額はクラブチームによって大きく異なっており、場所によっては産業レベルの経済規模を持つチームも存在しています。
参考>>>スポーツチームの資産価値ランキングでわかる世界と日本の差
サッカー選手とクラブの関係
次に、サッカー選手とクラブの関係性について見ていきましょう。
先ほどお話ししたように、サッカー選手はクラブチームと契約を交わす(所属する)ことで初めてプロサッカー選手となり、プロスポーツ選手としてその所属するクラブで活動をしていくことになります。
主な「活動」というのは、簡単に言えば練習や試合をすることです。
リーグの仕組みやクラブの成績によって多少のバラつきがありますが、クラブチームの年間の公式試合数は最低でも50試合くらい、多いチームでは60試合以上になります。
1シーズン(約9か月)の間にそれだけの試合数をこなし、さらに練習日も含めれば、選手は必然的に所属クラブへ「通える範囲」に住む必要があります。
したがって、所属がJリーグであれば生活は日本ですが、例えばドイツのクラブに所属する日本人選手なら普段の生活はドイツになりますし、中国のクラブに所属するブラジル人選手なら普段の生活は中国で過ごすことになります。
ワールドカップ予選などの代表の試合というのは、その所属クラブのスケジュールの合間に行われており、選手からすれば、代表のユニフォームを着る試合は「特別参加」という扱いなのです。
この関係を身近なもので例えるならば、我々にとっての会社や学校と同じようなものです。
日々の生活の中心はそこであって、それと同じようにクラブとサッカー選手は切っても切れない深い関係にあるのです。
ここで、所属クラブと選手の関係の具体例をあげてみましょう。
本田圭祐
本田圭祐(ほんだけいすけ)。
ご存知、日本代表の選手です。
彼は大阪府出身の日本人ですが、2008年に日本を飛び出し、オランダ・ロシア・イタリア・メキシコのクラブを渡り歩き、そして2018年11月現在はオーストラリアのメルボルン・ビクトリーに所属しています。
ということは、オーストラリアのクラブに所属している本田圭佑は普段オーストラリアで生活を送り、日本代表として試合をするときは、そのクラブの試合の合間に日本や敵地に赴いて試合を行っているということになります。
クリスティアーノ・ロナウド
クリスティアーノ・ロナウド(本名はクリスティアーノ・ロナウド・ドス・サントス・アヴェイロ)。
ご存知、世界を代表するフットボーラ―です。
ポルトガルのマデイラ島に生まれたロナウドは、地元ポルトガルの名門クラブチーム「スポルティング」でキャリアをスタートし、その後イングランド、スペイン、そして現在はイタリアのユベントスに所属しています。
ということは、イタリアのクラブに所属するロナウドの生活の拠点はイタリアにあるわけですね。
クラブは国籍フリーである
いよいよ、今回のテーマの本質へまいりましょう。
クラブチームと選手やスタッフが「契約とともに成り立っている」のはわかっていただけたと思いますが、注目すべきポイントは「国籍」にあります。
上述の例で解説すると、本田圭祐はあくまでも日本人であり、日本人として世界各国のクラブチームに所属してきました。
クリスティアーノ・ロナウドはポルトガル人であり、ポルトガル人としてヨーロッパ各国のクラブチームに所属してきました。
そう、ここでひとつ言えるのは、クラブチームに所属する選手やスタッフには、「国籍という制限」がないのです。
本田圭祐以外にも、長谷部誠はドイツのクラブに所属していますし、長友佑都はトルコのクラブに所属しています。
「FIFAワールドカップ」は、各国の代表チームが世界一をかけて競う大会です。
ですから、日本人なら日本代表チームの一員として、ポルトガル人ならポルトガル代表チームの一員としてワールドカップに参加するのが絶対のルールです。
一方、「FIFAクラブワールドカップ」は、各大陸王者のクラブチームが世界一をかけて競う大会です。
ですから、日本人がドイツのクラブチームの一員として参加しようが、ポルトガル人がイタリアのクラブチームの一員で参加しようが、そこに国籍という壁は存在しません。
国籍という垣根を越えて成り立っているのがクラブチームの最大の特徴であり、代表チームとの決定的な違いなのです。
ということで、ワールドカップとクラブワールドカップの違いは、「大会に参加するチーム構成の違い」です。
こういった背景から、クラブチームにはたくさんの外国人が所属していますが、国によって所属できる外国人の人数や契約に条件がついているケースがあるので、詳しくはこちらを参考にしてください。>>>ヨーロッパ主要リーグとJリーグの外国人枠にあるギャップ
クラブチームで競う主な大会一覧
では最後に、クラブチームが参加する主な大会を簡単にご紹介します。
UEFAチャンピオンズリーグ
ヨーロッパ大陸のクラブNo,1を決めるのが、UEFAチャンピオンズリーグです。
断言しますが、世界で最も面白いサッカーを見られる大会です。
その理由はこの記事でわかります。>>>ブンデスリーガに日本人が多いのはなぜ?
コパ・リベルタドーレス
こちらは南米のクラブチームNo,1を決める大会。
組織的と言われるヨーロッパのクラブチームとは対照的に、個人技を重要視した南米独特のサッカーと、ラテンの香りがたっぷりのスタジアムを見られる興味深い大会です。
FIFAクラブワールドカップ
世界6大陸の王者と開催国のクラブチームが参加し、「クラブ世界一」を競うのがFIFAクラブワールドカップです。
「ワールドカップとクラブワールドカップの違いはチーム構成」だと先ほどお話ししましたが、細かく言えば違いは他にもたくさんあります。
成り立ちを少し振り返ってみましょう。
過去のクラブワールドカップのレギュレーション
クラブワールドカップの前身は、ヨーロッパ大陸王者クラブと南米大陸王者クラブが対戦する「インターコンチネンタルカップ」です。
のちにトヨタ自動車が冠スポンサーとなって、大会名は「トヨタカップ」に変わりましたが、大会形式としては1試合だけが行われるカップ戦に過ぎませんでした。
つまり、インターコンチネンタルカップ、後のトヨタカップの大会の意図としては、「強豪クラブの多いヨーロッパ王者と南米王者のクラブを対戦させて世界一を決めよう」というスペシャルマッチだったのです。
現行のクラブワールドカップのレギュレーション
現行のクラブワールドカップですが、前身のトヨタカップから規模を拡大して、世界6大陸の王者+開催国のクラブの合計7チームが参加する大会となりました。
クラブワールドカップの大会意図としては、「各大陸王者によるクラブ世界一決定戦!」なのでしょうが、現行のシステムに変わってからも、大会を制するのは毎回欧州王者か南米王者のどちらかとなっており、スペシャルマッチだった頃とその本質は変わっていません。
ワールドカップとの数字上の比較
では最後に、ワールドカップとクラブワールドカップの目に見える数字上の違いをご紹介します。
- 参加チーム数(ワールドカップ=32、クラブワールドカップ=7)
- 歴史(ワールドカップ1930年~、クラブワールドカップ2005年~)
- 大会賞金(優勝の場合、ワールドカップ=43億円、クラブワールドカップ5億7千万円)
当然、スポンサーやメディアの注目度も大きく異なりますし、大会規模としては雲泥の差があるというのが現状です。
日本の祭りで例えるならば、ワールドカップは博多祇園山笠や青森のねぶた祭り、クラブワールドカップは町内会の盆踊り程度といったところでしょうか。
ただ、2019年以降は開催形式の変更が計画されているようなので、今後のFIFAの動向次第では現状を打破できるかもしれません。
まとめ
- ワールドカップ=代表チーム
- クラブワールドカップ=クラブチーム
この記事で、両者の違いがおわかりいただければ幸いです。
サッカーは、野球大国の日本にとってはまだまだ「新しいスポーツ」です。
野球の知識を語ることができるおじいさんはいても、サッカーの知識を語ることができるおじいさんは少ないでしょう。
スポーツニュースの優先順位が今のまま変わらなければ、サッカーが文化として定着するまでは数十年かかるでしょう。
近年「選手の爆買い」を続ける中国に先を越されないためにも、サッカーの本当の楽しさに触れられる機会が増えることを願っています。
ということで、次回はサッカーの本当の楽しさを知ったきっかけを語ります。>>>サッカー嫌いがサッカーにハマったワケ