ドイツと言えば、有名なのは自動車メーカーの「メルセデス」。
そしてドイツサッカーと言えば、有名なのは「ゲルマン魂」。
一見つながりそうにないこの2つのワードですが、実はサッカードイツ代表の特徴を理解するにはとてもいい足がかりになるのです。
ということで今回は、サッカードイツ代表と国内リーグのブンデスリーガの特徴を詳しくご紹介。
ドイツサッカーを丸裸にするため、ワールドカップの成績やドイツ人の国民性など、深く掘り下げていきます。
4分後には、メルセデスとゲルマン魂が見事につながるはずです。
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ドイツ代表の成績とサッカースタイル
ワールドカップにおけるサッカードイツ代表の成績
でははじめに、ワールドカップにおけるサッカードイツ代表の成績を振り返ってみましょう。
なお、ドイツは1990年10月に西ドイツが東ドイツを編入したという歴史があるため、1930年~1990年は西ドイツの成績です。
開催年 | 成績 | 出場国数 |
---|---|---|
1930 | 不参加 | 13 |
1934 | 3位 | 16 |
1938 | 1回戦 | 15 |
1950 | 不参加 | 13 |
1954 | 優勝 | 16 |
1958 | 4位 | |
1962 | ベスト8 | |
1966 | 準優勝 | |
1970 | 3位 | |
1974 | 優勝 | |
1978 | 2次リーグ敗退 | |
1982 | 準優勝 | 24 |
1986 | 準優勝 | |
1990 | 優勝 | |
1994 | ベスト8 | |
1998 | ベスト8 | 32 |
2002 | 準優勝 | |
2006 | 3位 | |
2010 | 3位 | |
2014 | 優勝 | |
2018 | グループリーグ敗退 |
ドイツ代表は初参加の1934年以降の19回の出場のうち、実に13回でベスト4以上の成績を収めています。
成績表を見てもわかるように、いつの時代でも常に好成績を出してきたのがドイツ代表の最大の特徴であり、彼らのサッカースタイルでもあるのです。
では、ここからもう少し掘り下げてみていきましょう。
ドイツ代表のサッカースタイル
ドイツサッカーの戦術の基礎になっているのは、「確率論」なのです。
サッカーとは、得点をあげなければ勝てません。
それと同時に、失点を抑えることで勝てる可能性が高まります。
ごくごく当たり前のことですが、監督はそれらを確実に実行できるであろう戦術プランを用意し、選手はそれらを確実に実行できるよう最善の準備をして試合に臨みます。
そして試合中は、無駄を省いた効率的かつ冷静なプレーをやり続けることで、最善の結果にたどり着くのです。
ただなぜいつの時代でも結果を残せてきたのか。
それは、「精度の高さ」にあります。
ドイツ代表の歴代監督はすべて自国のドイツ人です。
つまり、サッカードイツ代表は、いつの時代もドイツ人の描くゲームプランをベースにドイツ人がプレーをしてきたわけで、その精度が高かったからこそ常に好成績を収めてこれたのです。
そのスタイルは、時に衝撃の結果を生み出すこともあります。
ミネイロンの惨劇…
2014年7月8日にベロオリゾンテのエスタジオ・ゴベルナドール・マガリャンイス・ピント(通称ミネイロン)で行われた、FIFAワールドカップ・ブラジル大会(2回目)の準決勝、ブラジル対ドイツの試合でブラジルが1-7の惨敗を喫したことを指す通称である。
2014ワールドカップブラジル大会準決勝、開催国ブラジルとドイツの一戦。
前半11分にドイツに先制されたブラジルですが、「まだまだ試合はこれからだ!」と反撃を誓い、逆転の決勝進出を目指し意気込むセレソン。
しかし、黄色と青のカナリヤ軍団はそれから約10分後、ドイツサッカーの脅威を目の当たりにします。
ブラジルは前半23分~29分のたった6分間で4失点を喫し、最終的には1-7という歴史的大敗を味わうことになるのです。
国民の誇りであるセレソンが次々に失点を重ねるその光景を、まるで悪夢を見ているかのように、ただただ呆然と見つめることしかできなかった地元ブラジルサポーターたちの姿。
王者ブラジルが、ゴールへ最短のアプローチで向かう鋭い戦闘力のドイツに圧倒された試合でした。
時には「惨劇」をも生み出してしまうほどの質の高さを誇るドイツサッカーですが、先ほどお話ししたように、それを裏付ける記録がワールドカップの成績なのです。
では、その質を生み出す精度の高さの根源はどこにあるのか。
次の章では、ドイツサッカーをより理解するためにドイツ人の特徴をみていきましょう。
ドイツ人の国民性
規律や時間をきっちり守る真面目さ
ワールドカップではいつの時代も安定して上位に入り、「堅実なサッカーで結果を残す」ドイツ代表。
その堅実さは、ドイツ人の国民性が大きく関わっています。
というのも、ドイツ人は非常に計画的で用意周到です。
予定を綿密に組むことでスケジュール管理を徹底し、時間通り、予定通りに物事が進むように行動します。
そのため、途中で物事を投げ出したりすることを大きく嫌うのです。
ドイツ人のイメージに「真面目」というワードをよく見かけますが、まさにこういった普段の行動がそう印象づけているのでしょうね。
感情や言葉遣いは控え目
2017年に開催されたコンフェデレーションズカップでも、その国民性が随所に確認できました。
国歌斉唱や試合中の振る舞いなどは、対戦相手のチリやメキシコが見せる感情むき出しの言動とはまさに対照的。
レフェリーに対して必要以上に抗議をしなかったり、ゴールが決まっても爽やかにハイタッチを交わし、軽いハグをする程度です。
しかも、このコンフェデの中心メンバーは20代前半の若い選手でした。
感情控えめな若い彼らのシャイな振る舞いはかなり印象的で、日本人の僕からするととても親近感が湧いたのを覚えています。
ゲルマン魂の本質とは
ドイツサッカーの代名詞として欠かせないキーワードはやはり「ゲルマン魂」ですよね。
ただ、魂(たましい)と聞くと、大半の方はなにか熱い情熱のようなものを想像するでしょう。
しかし、先ほどお話ししたように、コンフェデでの若い年代の彼らが見せたのは、あくまでも「奥ゆかしさ」を感じる立ち振る舞いでした。
つまり、ドイツ人の持っているゲルマン魂の本質とは、何が起きても最後まで物事をやり遂げたいという強い意志なのです。
サッカーというスポーツは、激しい身体のぶつかり合いでもあり、選手同士が感情的になるシーンも当然よく見られます。
しかし、ゲルマン魂を持ち合わせていれば、計画通りに物事を進めるためにあえて感情を排除できるのかもしれませんね。
「ドイツ・ブンデスリーガに日本人が10人所属する理由」という記事でも解説していますが、2018年現在ドイツのクラブチームに多くの日本人が所属している理由は、こういった「真面目さ」+「感情表現が控えめ」という2つの共通の国民性が大きく関わっていることは間違いなさそうです。
真面目だからこそ働かない
ただし、そういった共通点を持ちながらも、日本人とは決定的に違う価値観も持っています。
というのも、大半の日本人は仕事熱心な人ほど残業をしたり、休日返上で働くのが当たり前ですよね?
日本では、企業規模の大小を問わず、役職が上の立場になればなるほど勤務時間が長くなる、というのが常態化してます。
一方ドイツでは、時間きっちりで仕事を終わらせ、いち早く帰れるように最大限の努力をするのが一般的なのです。
事実、OECD(経済協力開発機構)が発表した平均年間労働時間によると、日本は1713時間、それに対してドイツは1363時間。
年間休日を平均的な120日で仮定した場合、日本は1日平均6.99時間、対するドイツは5.56時間なので、日本人はドイツ人に比べて1日約1時間半も長く働いているということになります。
- 日本→「仕事熱心=長く働く」
- ドイツ→「仕事熱心=効率性」
世界のトップを行く信頼のメルセデス
ドイツの得意分野と言えば、精巧な技術を必要とする機械工業の分野です。
1886年、世界初のガソリン自動車は、ドイツ人のカール・ベンツによって発明されました。
それから1世紀以上が経ちましたが、世界最高峰のモータースポーツであるフォーミュラ1世界選手権(通称F1・エフワン)では、ドイツ・メルセデス社の提供するエンジンが常に好成績を収めています。
そして、F1で得た技術はのちに市販車に生かされることになり、その結果、ドイツ車は日本でも以前から高い評価を獲得し続けています。
メルセデス・BMW・アウディ・フォルクスワーゲンなど、日本国内での輸入車新車登録台数(2017年4月)の実に6割以上がドイツ製なのです。
車に詳しくない人でも、「ベンツ」や「ビーエム」という響きくらいは聞いたことがあるでしょう。
ドイツ車はそれだけ日本で評価され、浸透しているわけですね。
つまり、こうした機械工業の分野におけるドイツ人の活躍を見れば、ドイツ人の国民性とは何なのかがよくわかるのです。
まとめると、サッカードイツ代表とは、機械工業で見せる「精度の高さ」をベースとし、そこに物事を最後までやり遂げるという「ゲルマン魂」が加わることで成立しているのです。
ブンデスリーガの印象
ドイツのプロサッカーリーグは「ブンデス・リーガ」と呼ばれ、1試合平均の観客動員数ではイングランド・プレミアリーグを抑えて1位となっています。
リーグの力関係ですが、優勝はバイエルン・ミュンヘンが27回(2位は9回のニュルンベルク)と圧倒しています。
さらにバイエルン・ミュンヘンは、同じ国内のライバルチームで活躍しだした若手選手を買って自分のものにしてしまうところがあるため、「ジャイアン的1強」といった印象が強いですが、同じ1強リーグでも、イタリアと決定的に違うのはクラブ運営の健全さです。
というのも、真面目なドイツ人によって運営されるドイツサッカー連盟という組織は、リーグへの参加条件も厳密に管理しています。
そのため、毎年のように記録が更新される莫大な移籍金が発生するような取引、爆買いによる破格の年俸提示などはほとんど見られません。
その成果もあり、かつては世界3大リーグと言われたスペイン・イタリア・イングランドに対し、2強以外は赤字運営のクラブが多いスペイン・リーガ・エスパニョーラ、FFPによる影響でリーグバランスが崩壊したイタリア・セリエAに割って入るまでになり、近年好調のパリ・サンジェルマンを有するフランスと共に、現在では世界5大リーグと呼ばれるほどまでになりました。
まとめ
「真面目」な国民性を生かし、ワールドカップの舞台では、優勝4回・準優勝4回・3位4回・4位1回と出場19回のうち、実に13回はベスト4に勝ち上がってきたドイツ代表。
UEFAチャンピオンズリーグなど、クラブチーム単位の国際大会でも、安定した成績を残すようになった国内リーグのブンデス・リーガ。
直近の2018ワールドカップロシア大会では、実に40年ぶりとなるまさかのグループリーグ敗退を喫しましたが、彼らなら早い段階で再びトーナメント表の高い位置に戻ってくるでしょう。
なぜなら、ゲルマン魂を持ち合わせているのですから。
次回は、トータルフットボールを生んだ国、オランダです。>>>オランダのサッカースタイル「トータルフットボール」とはなにか。