ショアジギングでは、PEラインにリーダーを編み込んだラインシステムを使うのが一般的です。
でも、なぜショックリーダーを組み合わせる必要があるのでしょう。
その問いの答えをひとことで言い表すなら、「PEラインの持つ欠点を補うため」。
ということで今回は、「PEラインにショックリーダーが必要な3つの理由」を詳しくお話しします。
この記事を読むことによって「PE直結」のリスクがわかっていただけるはず。
PEラインとショックリーダーを結ぶデメリット
記事冒頭でお話させていただいたように、ショックリーダーはPEラインの持つ欠点を補うためのもの。
なぜそうするかといえばもちろん「メリットがあるから」なんですが、同時に「デメリットもついてくる」のを知っておかなければなりません。
ショックリーダーが必要な理由の前に、まずはそちらのほうからお話しさせてください。
ノットを結ばなければならない
PEラインとショックリーダーを結ぶデメリットのひとつめは、ノットを結ばなければならないということです。
というのも、PEラインとショックリーダー、そしてルアーの3者の位置関係を見ればわかるように、ショックリーダーはPEラインとルアーの間に結ばなければなりません。
PEラインとルアーを直接結ぶ「PEライン直結」であれば結び目は1か所で済みますが、ショックリーダーを間に挟むことで結び目は2ヶ所になります。
実は、結び目はラインの強度を落とす原因になりやすく、しかも、そのうちの1か所はPEラインとショックリーダーという「糸同士を結ばなければならない」ということ。
そして糸同士を結ぶためには、「ノット」と呼ばれる結び目の強度を保った結び方を習得しなければなりません。
靴ひもを結ぶのとは違って複雑な作業ですし、かといって雑に結んでしまうと結び目がほどけてしまったり、魚がかかったときにすっぽ抜けてしまったりすることも。
慣れてしまえばそれほど難しいものではありませんが、特に釣り初心者にとっては「ノットをしっかりと結ぶ」という作業が最初の難関になるでしょう。
準備などの時間が長くなる
PEラインとショックリーダーを結ぶデメリットのふたつめは、釣行前の準備などの時間が長くなってしまうこと。
なぜなら、ノットをしっかりと結ぶのには時間がかかるためです。
というのも、PEラインとショックリーダーを編み込むノットは、釣行の前日などにあらかじめ仕込んでおくことをおすすめしています。
その理由は、釣り場はノットを結ぶ場所に適さないから。
屋外、特に海辺は木や建物など遮るものが少ないため、無風の状態というのはあまりありません。
PE1.5号の場合でいうと、約0.2mmのPEラインと約0.5mmのショックリーダーを組み合わせるのがノットであり、それだけの細い糸同士を結ぶのには風は大敵。
その他にも雨が降っていたり、寒さで手がかじかんでいたり、暗い時間帯だったりすればさらにやりづらい状況になるのは想像にたやすいですよね。
なので、ショックリーダーを使うのであれば環境の良い自宅でノットを組んでおくほうが絶対にやりやすいですし、そうして用意しておくことで、釣り場に着いたらすぐに釣りを開始することも可能になる。
それゆえに、ショックリーダーを使う場合はPEライン直結に比べて準備に時間がかかるのです。
ただし、「準備も釣りのうち」というように、あれこれ考えながら準備をする時間も意外と楽しかったりするわけで、そうとらえればむしろ準備に時間がかかるというのはメリットと言えるのかもしれません。
PEラインにショックリーダーが必要な理由
さてここからが本題。
PEラインにショックリーダーを結ぶことで得られるメリットとはなにか、それをより深く知るにはPEラインの特性を押さえておくことをおすすめします。
PEライン、持ってます。
PEラインよりも伸びしろがある
PEラインにショックリーダーが必要な理由ひとつめは、ショックリーダーがないと、魚がかかって合わせをいれたときに強い負荷がかかって切れてしまうから。
これを一言でいうと「PEラインは衝撃強度が低い」のです。
先ほどご紹介した記事(ショアジギングでPEラインを選ぶ真の理由)を読まれた方は「あれ?」と思った人もいるでしょう。
なぜなら、PEラインは細くても強度が高いとお話ししましたからね。
ただ、PEラインの特性をもう一度思い返してみてください。
上の記事では「PEラインは伸びが少ない」とお話ししましたが、実はこの特性が、魚がかかったときにはデメリットになってしまうのです。
というのもショアジギングの場合、他のショアの釣りに比べて比較的硬めのロッドを使うことになります。
魚からのコンタクト、いわゆるアタリがあったらロッドをグッと持ち上げて合わせを入れるわけですが、その瞬間、PEラインがピン!と張るのは想像できますね。
ロッドが柔らかければその瞬間の衝撃をロッドが吸収してくれますが、ロッドが硬ければその瞬間の衝撃はもろにPEラインを直撃することに。
このとき、他のラインなら「伸び」があるがゆえに衝撃をかわせるけど、伸びの少ないPEラインではその衝撃をかわすことができずにラインがバチンと弾け飛び、その瞬間釣り終了。
そこで、その瞬時の衝撃を和らげるため、ルアーとの間にショックリーダーを挟みこむことによって「糸が切れる=ラインブレイクを防ぐことができる」ようになるのです。
PEラインとショックリーダーは実際にどのくらい衝撃強度に差があるのか、とても参考になる記事があったのでここにご紹介させていただきます。
伸びの少なさゆえにルアーを思い通りに動かすことのできるPEライン。
しかし、合わせの瞬間はその特性が裏目に出てしまう。
PEラインにショックリーダーを結ぶメリットはそういったPEならではの特性を補うことが目的なのです。
PEラインよりも根ズレに強い
PEラインにショックリーダーが必要な理由ふたつめは、ショックリーダーはPEラインよりも擦れに対する耐久性が高いため。
PEラインの弱点、それは「傷に弱い」ということ。
というのも、ルアーを遠投するショアジギングのような釣りにおいては、根ズレは決して避けて通ることのできない厄介な障壁です。
根ズレとは
「根ズレ」とはいったいどんなものなのか、イラストで簡単に解説をしていきます。
船釣りのような真下にルアーを落とすタイプの釣りとは違い、ルアーを横方向に引きずるようなショアジギングでは上の画像のようにラインが岩に擦れる可能性が非常に高まります。
ただし、これはなにも釣り場がゴツゴツとした岩場のときだけ起こるというわけではなく、例えサーフのような砂地であったとしても例外ではありません。
PEラインは水よりも比重が軽く、水に浮く性質を持っています。
しかし、水深の浅い砂浜、いわゆる遠浅のサーフでルアーを遠投すれば、PEは着水直後は浮いていられるものの、時間の経過とともにルアーの重みに引きづられて底付近を漂うことに。
さらに、砂地の海底は一見すると真っ平らになっているようにも感じますが、実際には「ブレイク」や「かけ上がり」と呼ばれる段差があったり、部分的に砂がえぐられて穴のようになっていたりと地形に起伏があるのです。
つまり、「手前のほうが水深が深く、奥のほうが水深が浅い」といったような場所もあり、もうこうなると最初にお話した「磯の根ズレパターン」のような状況も有り得るということ。
もちろん、砂がメインの海底は荒々しい磯に比べたらザラザラ度はかわいいほうかもしれませんが、それでも「傷に弱い」という弱点を持つPEラインにとって、この「砂との擦れ」は深刻な問題になりかねないのです。
擦れる場所は水中だけではない
さらに、ラインが擦れる場所は海の中だけではありません。
例えば、岩場や砂浜を歩き回る釣り、いわゆる「ランガン」スタイルで釣りをする場合、機動性を確保するため竿立てを使わないといったケースも多いはず。
ともすればタックルのセッティングを行なうとき、あるいは針にかかった魚を外すときなどに砂や堤防などに直接ロッドを置くこともあるでしょう。
無風状態が少ない海辺で風にあおられたPEラインは砂やコンクリートに擦れることになり、それを何度も繰り返しているうちにダメージが蓄積されていき、いずれは深刻な外傷につながる可能性も。
このように、環境と対峙する釣りにおいて我々の強い武器となる「PEラインの取り扱い」には、特に充分な気配りを行なっていくことが必要です。
PEラインとフロロの強度比較
ここで、PEラインがショックリーダーに比べて実際にどのくらい傷に弱いのか、非常に参考になるサイトがあったのでここにご紹介しておきます。
実験はシンプルでわかりやすく、紙やすりに擦れたラインが何回目で切れるかという内容。
実験の結果を要約すると、同じ太さのPEラインとフロロ(ショックリーダー)で10倍以上、同じポンド数のPEラインとフロロで50倍以上という圧倒的な耐摩耗性の差がついています。
この実験結果でハッキリわかるように、PEラインは予想以上に根ズレなどの傷に弱いのです。
そこで、海底に擦れる可能性の高いラインの先端部分だけを「傷に強い」ショックリーダーに置き換えることより、「伸びの少ないPEライン」と「傷に強いショックリーダー」という両者の長所を掛け合わせたラインシステムが完成するのです。
- ショアジギングではラインが擦れるシチュエーションが多々ある
- PEラインとショックリーダーは耐摩耗性に圧倒的な差がある
- PEラインとショックリーダーを結ぶ理由のふたつめは、傷に弱いPEラインを補強するためである
PEラインよりも水の中で見えにくい
PEラインにショックリーダーが必要な理由3つめは、ショックリーダーはPEラインよりも水の中で見えにくいため。
これには屈折率が関係しています。
屈折率というとなんだか面倒くさい話しになりそうですが、何はともあれ、まずは画像をご覧ください。
左がPEライン、右がフロロカーボンと呼ばれる材質のショックリーダーですが、見た目の違いは一目瞭然ですね。
複数の繊維を束ねたPEラインは透明度ゼロですが、ペレットと呼ばれる樹脂を加工したフロロカーボンは半透明。
つまり、PEラインは光を全く通さないけど、フロロカーボンは光を通す性質を持っているということ。
光を通す性質ということは水の中で周囲の風景に馴染みやすいということであり、フロロカーボンの光の屈折率は1.42と水の屈折率1.33に近いため、「水の中で見えにくいラインである」ということを示しています。
「ショアジギングでPEラインを選ぶ真の理由」でもお話ししているように、釣り糸は可能な限り魚に見えにくい姿であることが理想的。
同じ強度でも細ければ細いほうが良いし、透明か不透明かを選べるなら当然透明の糸のほうが良いに決まっている。
ただし、釣り糸の見えにくさが問われる場所は空気中ではなく水の中。
その水と屈折率が近いということは「水中で可能な限り違和感を減らすことができる」わけであり、違和感を減らせるということは「魚の警戒心を下げることができる」ということにもなる。
こういった理由から、PEラインの先端部分にショックリーダーを組み込むことによって魚を釣る可能性を高めることができるわけですね。
ちなみに、ショックリーダーとして一般的に使われるラインの材質は「フロロ」と「ナイロン」ですが、私はフロロのほうをおすすめしています。
なぜナイロンではなくフロロなのか、その答えはこちらの記事で。
まとめ
PEラインにショックリーダーが必要な理由をまとめます。
- ショックリーダーはPEラインよりも伸びしろがあるため、合わせの瞬間の衝撃を吸収してくれる
- ショックリーダーはPEラインよりも傷に強いため、根ズレなどの擦れに強い
- ショックリーダーはPEラインと違って光を通す性質であるため、水の中で見えにくい
PEラインとショックリーダーを組み合わせるにはノットを編みこむ必要があり、そのため準備に余計な時間がかかるといったデメリットがあるものの、上述の3つの機能がもたらすメリットは我々釣り人に大きなアドバンテージを与えてくれます。
釣りおいて、釣り糸は絶対になくてはならないマストアイテム。
できるだけ傷に強く、でもそれでいてしなやかで、そのうえなるべく目立たない存在であってほしい。
ショックリーダーはそんなわがままな釣り人の願いを叶えてくれる優れたツールであり、PEラインに欠かすことのできない縁の下の力持ちなのです。
これらをシンプルに言い換えると、「PEラインにショックリーダーを結ぶことによってラインが切れる可能性を低くすることができる」ということ。
だからこそ、PEラインにはショックリーダーが必要なのです。
この記事が、あなたの趣味をより豊かにできますように。
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